2018年11月24日土曜日

よく聴いた音楽 2018 7月・8月編


もうすっかり年末モードに差し掛かった今、夏ごろを振り返ってます。
意図せずジャズっぽい作品が多くなりました。



Javier Santiago / Phoenix



Phoenix



アメリカはミネソタ州を拠点に活動するジャズピアニスト・Javier Santiagoの2ndアルバム。
コズミックでシリアスな空気感をまとったヒップホップ通過後のニュージャズ…かな。
幼少期からジャズピアノ、高校からは作曲を学び、ジャズピアノで学士号取得。アメリカのコンクールでも賞を取るなど腕前は折り紙つき。レーベル所属前からヒップホップのビート集も数枚発表しており、ビートメイクもお手の物。
そんな彼の脈打つようなピアノをはじめとしたバンドは、どうやら即興性も高いパートもあり、テクニカルなプレイヤー達による収録時のグルーヴ感みたいなものも丸ごと収録されている。そこに奥行と浮遊感のあるシンセと時々主張するビートも絡むことでにじみ出る小宇宙的神秘。
作品全体のムードはシリアスだけど、バンドの各パートからはエモーショナルな生きた温度感が感じられるちょっと不思議な音色が心地よいジャズアルバムでした。







R+R=NOW / Collagically Speaking





テラス・マーティン、テイラー・マクファーリンなど、ロバート・グラスパー周りの音楽家が集まって結成されたジャズバンドのデビューアルバム。
R+R=NOWは”Reflect+Respond=NOW”をという意味で、「時代を反映させることはアーティストの責務である」というニーナ・シモンの有名な言葉にインスパイアされたグループ名とのこと。
ロバート・グラスパーが関わるいくつかのプロジェクトやバンドの中でもヒップホップ、R&B/ソウル寄りのアプローチは影を潜めたニュージャズ路線。言うことなしのカッコよさ。






天気予報 / 青空





天気予報のアルバム『青空』…。
ニュースや天気予報、CMなど主にテレビからサンプリングした音をチョップト&スクリュード、ループさせたウェザー系ヴェイパーウェイヴを一貫して上げ続けるアーティスト?天気予報が3月にリリースした最新作。
過去作は上記のようなサンプリングにローファイでキツいループがかけられた、聴き続けたら頭がおかしくなりそうだけど時々欲しくなる”珍味”のような作品が多かったのだけど、本作はこもった感じのローファイでチープな音色などヴェイパーウェイヴ的雑味(旨味)は共有しつつ、シンセウェイヴやエレクトロニカ色が強くなっている。たぶん権利的にもホワイトです。
天気予報の作品の中では唯一サブスク配信があったりするので、過去作とは一線を画す作品であることが伺えるけど、どういう風の吹き回しなのか。いずれにせよ A E S T H E T I C です。







Daedelus / Taut


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アメリカのビートメイカー・Daedelusの、なんと19枚目のアルバム。
光が瞬きながら浮遊するような、やさしく幻想的なエレクトロニカ。こういうシンセやビートもしっかりあって且つドリーミーなふわふわ感が共存してる作品って意外と少ない。
ノンボーカルのインストものメインで、時々客演でホーンやピアノなど生音が入る曲もあり、アクセント程度の程よい主張で作品の世界に溶け込んでいてバランスが良かった。踊れるビートと重層的な癒しのシンセ。いいとこどり。







M-Swift / Moving with The Changes


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音楽プロデューサー松下昇平によるプロジェクト・M-Swiftのアルバム。
バンド演奏メインの大人なジャズ~アシッドジャズ・ソウル。Incognitoのメインボーカル・Vanessa HaynesやShea Soulなど、UKのミュージシャンを中心としたゲストボーカルに迎え、全編ロンドンで製作されている。個人的にはデビュー当時から定期的に動向を追ってきたNate Jamesと、甘くややハスキーなキャンディーボイスで一際個性が光っていたNatalie Oliveri参加の曲が印象的だった。
歌声の個性がハッキリとしたゲストボーカル、強い曲・弱い曲のバランスと曲順も良く、1時間近くあるアルバムを通して聴いても一本調子にならない。この長さでダレることなく最後まで聴ける作品は貴重です。







さよひめぼう / CRYSTALあいまい





日本のビートメイカー・さよひめぼうのアルバム。
ポストヴェイパーウェイヴ、エレクトロニカ、エクスペリメンタル、ドリルンベース。ダークにユーモラスにファンタジックに目まぐるしく変化していく。ジャケットからも見て取れる鮮烈でギラギラとした極採色なサイバーパンクサウンド。強制的に脳細胞をゴリゴリかき回されるような強烈な世界観で、”さよひめぼう”としか言いようのない世界が広がっている。このハイというかトリップしたような感覚は他では味わえない。新種のドラッグ。






BIM / The Beam




Summit所属、THE OTOGIBANASHI'S / CreativeDrugStoreのBIMの初ソロアルバム。
お馴染みの肩の力が抜けたラップスタイルと、グループの時より更にレイドバックしたトラックという、脱力×脱力のずるずるとしたグルーヴ感が心地良い作品。
真夏のうだるような暑さの中、ずるずるに力が抜けて少し地面から足が浮いちゃってるようなアルバム。





The Internet / Hive Mind




LAのバンドThe Internet、4枚目のアルバム。
メロウで渋い、バンドで奏でるR&B。気だるいグルーヴ感は損なわれず、前作『Ego Death』より打ち込み要素が減退してバンドサウンドがより前面に出ているアルバムです。総合的には地味だけどスッキリとしていて音のひとつひとつに無駄がない。全て丁寧に作りこまれた印象。







Dorian Conncept / The Nature of Imitation





オーストリアはウィーン出身のキーボーディスト、マルチプレイヤー・Dorian Connceptのアルバム。
エレクトロニカ…と言えばエレクトロニカだけどただ打ち込みでピコピコしてるだけでもなく、プログレっぽくもジャズっぽくもあり、クロスオーバー化が著しくただでさえ言葉で伝えることが難しい現代音楽の中でも、この人ほど言語化しにくい音楽性もなかなかないのでは。素人には判別不能の境地です。
そんな複雑な音楽性にも関わらず小難しさを感じないキャッチーなメロディラインが満載で、オーケストラ並みの重層的な音色と独特の温~い温度感で、耳が包まれるような優しさも感じる不思議な電子音楽です。ソニマニに続き年末にも来日予定。





ASA MOTO / Playtime EP





Soulwaxのレーベル・DEEWEE所属のOlivier GeertsとGilles Noeによるユニット、ASA MOTOのEP。
終始ミドルテンポでアップダウンの少ない、バレアリックな匂いもするエレクトロニカ。淡々とした無機質さの中にもじんわりとした暖かさを感じさせる中庸な音色は、Soulwaxが去年リリースしたアルバム『From Deewee』にも似たムードを感じさせる。
どうやら謎の多いユニットらしく、”ASA MOTO”という日本語由来っぽいユニット名をはじめ、本人達の周辺情報が全くと言っていいほど出てこなかった。







RHYMESTER / After 6


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RHYMESTERの配信シングル。
4月からはじまった宇多丸さんがメインパーソナリティを務めるラジオ番組・アフター6ジャンクションのテーマ曲。平日毎日のように聴いていた曲がやっと配信リリース。
午後6時、仕事からの解放感を具現化したようなトラックのシンセ使いは何度聴いても気持ちが高揚する。リリックもそんな解放感と番組開始の6時以降楽しんでいこう的なメッセージが。ライムスターのラップは聞き取りやすいので内容も入ってきやすい。







新しい学校のリーダーズ / 狼の詩 




新しい学校のリーダーズとH ZETTRIOのコラボシングル。
H ZETT Mプロデュースでリリースしたアルバム同様のジャズロック歌謡路線。表題曲「狼の詩」、B面「雨夜の接吻」とも阿久悠未発表の詞にH ZETT Mが曲を付けてリーダーズが歌うスタイル。
中森明菜、後期山口百恵的迫力ある低音ボーカルのSUZUKAがリードをとる「狼の詩」は疾走感あふれるピアノロック歌謡、「雨夜の接吻」は少女のあどけなさが残る無垢な歌声が魅力的なMIZYUが歌唱。昭和っぽい色香がそこはかとなく漂うミディアムジャズ歌謡。
いずれも作詞・作曲・ボーカルとグループの世界観がキレイにはまっていて素晴らしい。






Ciara / Level Up





Ciaraのシングル。
ジューク/フットワーク的なBPM150前後のハイテンポなビート感と奥行きと中毒性があるアレンジがかっこいいR&B・ダンスチューン。
ダンサーとしてのスキル全開のキレたMVや、#Levelupchallengeのハッシュタグを付けたダンスカバー動画の投稿が海外では夏ごろ話題になっていた。今でもSNSで検索すると新規投稿がチラホラ。Ciara自身も振付けにも参加しているらしい。
ありがちなバラード~ミドルテンポな曲よりも、アッパーかつクセのあるビートの曲で、変な振付けでもカッコよく踊りこなすCiaraが私は好きです。





2018年8月2日木曜日

よく聴いた音楽 2018 5月・6月編



Steven Julien / Bloodline





ロンドンを拠点に活動するDJ / ビートメイカー・Steven Julienのミニアルバム。FunkinEvenという名義でも活動しているそう。本作は彼の家族と電子楽器の定番TR808の制作リーダーで昨年亡くなったローランドの創始者・梯郁太郎氏に捧げた作品とのこと。
ジャケの印象から新人ラッパーかな?と思ったら中身は結構ストイックなエレクトロニカ・ハウス。ジャズっぽいシンバル、アシッドハウスっぽいゆがんだシンセなどフックになる音や、エレクトロニックでありなあがらエモーショナルな温度感や浮遊感も持ち合わせた不思議な感触の作品。





SOIL & "PIMP" SESSIONS / Dapper




日本のインストジャズバンド・SOIL & "PIMP" SESSIONSのアルバム。
ジャズをベースにヒップホップ、R&B、エレクトロニカなどの影響も感じる、縦ノリより横ノリのグルーヴを重視した作品。本作では音数が多い攻めの爆音スタイル、ソイルの持ち味でもある”デスジャズ路線”は影を潜めている。それはメンバー脱退と活動休止を経て制作された試行錯誤の結果なのかもしてない。
三浦大知、野田洋次郎など、中には通常ジャズっぽいトラックで歌うことがなさそうなゲストを招いた歌モノもあり、どれもソイルとゲスト双方の個性を生かしあった良コラボだった。
ゲストの多さやデスジャズ封印など、新境地開拓には賛否あるようだけど長年追ってきた熱烈なファンというわけでもない私にとっては、広くブラックミュージックも吸収した踊れるジャズアルバムという感じで純粋に楽しむことができる作品でした。







Kiefer / Happysad





LAを拠点に活動する鍵盤奏者・Kieferのデビューアルバム。
ヒップホップのフィルタを通ったニュージャズ。きらびやかで都会的なローファイヒップホップ。
幼少期よりジャズピアノ、12歳からはヒップホップのビートメイクも学んだその経歴が存分に生きた音楽性。軽快なピアノが美しいのだけど、ジャズというよりビートの重さとローファイなフィルタが強い印象なのでアーバンなローファイヒップホップと言ったほうが近いかもしれない。ノンボーカルで程よく丸みを帯びたローファイな耳触りが心地よかった。めちゃくちゃオシャレ。







Soulwax / Essential



ベルギーのダンスロックバンド・Soulwaxの6thアルバム。
12年ぶりのアルバムリリースから1年。またアルバムが出るなんて誰が思っただろう。
無表情で淡々と打たれるBPM120前後の4つ打ちビートにサイケな上モノが乗ったエレクトロニカ。無心で踊り続けられる系ダンスミュージック。
前作が打ち込みとバンドの間のような音楽性だったのに対し、本作は時々”Essensial”という声が入る以外ほぼノンボーカルでエレクトロニックというかメカニックな音像で、バンド要素はほぼ無い。ラジオ局から依頼を受けて”Essensial”という言葉をテーマに2週間という短い期間で作られた12曲入り。前作で用いた機材は使用していないらしい。






パソコン音楽クラブ / DREAMWALK



関西を拠点に活動するDTMユニット、パソコン音楽クラブのアルバム。初の全国流通盤。
ヴェイパーウェイブを通過したクラブミュージック、シンセポップ…とは書いてみたものの、ハウス、シティポップ、フュージョン等々各曲のクロスオーバーっぷりも凄まじく、ビシッとどのジャンルとも言い表しにくいのだけど、曲の頭でグッとつかまれるキャッチーさとノスタルジックなメロディラインのエモーショナルさ、周波数が合わないラジオのノイズようなローファイな音色、タイトルが示すとおり夢の中を歩いているような虚構の世界が広がっている。パ音ワールド。
サックスが入ったミューザックのような最後の「Beyond」で夢か夢ではないのか分からないまま小奇麗にふわふわとフェードアウトしていく様もまたノスタルジック。






Ric Wilson / BANBA





シカゴの若手ラッパー・Ric Wilsonの2ndEP。
ラップと歌唱を自在に行き来するソウルフルなヒップホップ。打ち込みが基本ではあるもののカジュアルで時々アコースティックな暖みのあるトラック。それに音楽性や人物像は真逆っぽいけどLil Wayneを思わせる特徴的なヘリウムボイスに軽いフロウのラップが乗った、まろやかなグルーヴ感漂う作品。万人が好感を持ちそうな人当たりの良さというか、いい意味でラップ特有のイカツさを感じないところが良い。
ちなみにタイトルの『BANBA』は、1曲目頭のリリックにもある「Black art not bad art」の略。






Kamasi Washington / Heaven and Earth



アメリカのジャズサックス奏者・Kamasi Washingtonの2ndアルバム。
もはや説明不要レベルの新世代ジャズの象徴的アーティストの1人。CD2枚+隠しディスク1枚、トータル3枚3時間強という常軌を逸した尺の2ndアルバムをドロップ。内容はデビュー作『The Epic』に近い感じだけど長さとしてはそれ以上の超大作です。アルバムは『Heaven』と『Earth』に分かれており、1枚目の『Earth』はKamasiから見た外向きの世界、2枚目『Heaven』は彼の内側の世界を表しているそう。
綿密に作り上げられた壮大な世界観ゆえ、正直アルバムの世界を全然理解しきれていないのだけど、組曲になっているわけではないので通しで聴いても単曲で聴いても小難しい事考えずに曲単品で気軽に再生してその世界観の片鱗に浸るという聴き方もアリ。
指捌きが見えそうなサックステク、重厚なアンサンブル、ベース、ピアノ、などアグレッシブに躍動する各楽器の粒立ちの良い音に着目してみるのも楽しい。聴き方楽しみ方も無限大にありそう。





Young Gun Silver Fox / AM Waves

AMウェイヴズ


イギリスのAORデュオ、Young Gun Silver Foxの2ndアルバム。
メロウで爽やかな70年代後期のAOR。1曲目のイントロで既にSteely Danさながらな音楽性全開で制作時期を疑うも紛れもなく今年の作品だった。目立った今風のアレンジもなくそのまま完走。ジャケットが示す通りの夕暮れのサマーブリーズ感。気分は西海岸。






Sen Morimoto / Cannonball!!

How It Feels



京都出身の日本人でシカゴ在住のシンガーソングライター・Sen Morimotoの1stアルバム。
ヒップホップ、ジャズ、ロック、R&Bなどの要素を取り入れた、どのジャンルとも言い難いジャンルレスなオルタナヒップホップ。
ギターやサックス、ドラムをはじめとした生音、エッヂの立った変則ビート、それに素朴でスモーキーなボーカルと、まとまりのなさそうな要素をサラッとまとめ、複雑さや重さを感じさせないソフトな音像に仕上がっている。綿密に練られた新世代ビートミュージック。
幼いころ渡米したため日本語のレパートリーはさほど多くないらしいが、一応日本語混じりのリリックもアリ。トラックに使われた楽器は全て自身の演奏というのも衝撃的。歌も演奏も打ち込みも何でもできちゃう系天才肌。





2018年7月1日日曜日

よく聴いた音楽 2018 3月・4月編





新しい学校のリーダーズ / マエナラワナイ




4人組ダンスパフォーマンスグループ、新しい学校のリーダーズの1stアルバム。
また奇天烈なアイドルが出てきたか。と思われそうな昭和の女学生的ビジュアルと、”踊る、セーラー服と奇行癖。不寛容社会から“個性”と“自由”ではみ出していく。(一部要約)”というコンセプト、アヴァンギャルドな世界観で一見手を出しづらいのだけど、蓋を開けてみたら歌・曲・ダンス良しの精鋭集団だった。
ロック、ジャズ、歌謡をベースに生音でゴリゴリしたトラックは全曲H ZETT Mプロデュース。アルバムは疾走感のある東京事変といった感じの音楽性で全10曲。中盤、ふと我に返るかのようにサックスが印象的なミディアムテンポな「zzz」や刹那的なロック歌謡「透明ガール (H ZETT M edit ver.)」が挟まれるノスタルジックな展開も◎。
リードをとる2人の声質、影がありストレートな歌い方ともに世界観に合っていて、SUZUKAのドスが効いた通る低音、MIZYUの儚げで淡々とした歌もミステリアスな魅力がある。KANONとRINの歌声はソロが少なくまだ判別できていないけど、曲だけの実質アイドルユニットではなくトラックに負けないポテンシャルがあるグループだと思う。今後が楽しみな定点観察アーティスト入りです。






V.A /メガドライブ




昨年末始動したポップミュージックレーベル、Local Visionsの第一弾リリースとして発表されたコンピレーションアルバム。
国内外問わずヴェイパーウェイヴ界のニューカマーから、リスナーであれば言わずと知れた手練れのビートメイカーまで一堂に会した強力コンピ。
ヴェイパーウェイヴを機軸にエレクトロニカ、ニューエイジ、アンビエント、モールソフトなどのマイクロジャンルに加え、ローファイ、スクリュード、酩酊感、ポップにアヴァンギャルドなど音像・音色を取っても多種多様なこのジャンルの多面性が味わえるヴェイパーウェイヴアソートのような作品。
幕開けにふさわしいリゾートポップなFM Skylineの「w e l c o m e ™」、徹底的にニューエイジなbodylineの「song of the sea」など幅広く収録。中でもドリルンベースから転じてじっとりしたビートの激しいジュークに切り替わり、本作の中でも1番メカニックで緊張感があるSAYOHIMEBOUの「ガールズバー自動恋活ロボット」から、飄々としたトラックのワンフレーズループに、実際の気象予報の音源(BGMではなくアナウンスの部分)をサンプリングした天気予報の「沈殿サイクル」2曲を並びで聴いたときの凄まじい緩急が衝撃的だった。地底と大気圏外くらい気圧の差がある。






AQTQ / E-MUZAK




V.A『メガドライヴ』にも参加しており、インターネットを拠点に活動するアーティスト、AQTQのアルバム『E-MUZAK』が『メガドライヴ』と同じくLocal Visionsよりリリース。
ヴェイパーウェイヴを通過したシンセポップ、トラップ、ラウンジミュージック。といったところだけど、Bandcampにある”すべてのインターネット・ユーザーのためのヴァーチャル・ラウンジ・ミューザック。 ”という説明が1番しっくり来る。
空間をマイペースに漂うようにおおらかな曲調で一定のリズムを崩さず、曲間もなくシームレスに次の曲につながるので聴く者のペースを乱さない。日々のネットサーフィンのお供に最適。より快適で上質な時間をもたらしてくれる。
アルバムを1周するとそのまま最初の「air_conditioner」へも違和感なく繋がり、そのまま何周でも聴き続けることができてしまう永久機関的作品でもあるのでアルバムリピート推奨です。可愛らしいアートワークも自身で手掛けているそう。文字通りの”良いMUZAK”。






Tom Misch / Geography





既に各界絶賛。ロンドンを拠点に活動するの若きシンガーソングライターTom Mischのデビューアルバム。
メロウなギターが耳を惹くアコースティックソウル。ファンク、ディスコ、と踊れる要素に加え、ゲストラッパーを迎えてラップを挟み、時々ジャジーに、ポップに…と、派手ではないけどブラックミュージックを中心としたジャンルがまんべんなく散りばめられている洗練された作品。色々とジャンルを押さえていながらゴチャ付いた印象にもならず、軽やかでスムース。ややスモーキーで肩の力が抜けた歌声も嫌味がなくスルスルと耳に入ってくる。
タイトルだけでも抜群な「Disco Yes」、ジャジーなヒップホップビートに、同じくロンドン出身のラッパーLoyle Carnerをゲストに迎えた「Water Baby」など聴きどころ多数。






Knxwledge / Gladwemet




LA拠点で活動中のDJ/ビートメーカー、KnxwledgeのEPがStones Throwからリリース。
NxWorriesのAnderson.Paakじゃない方と言った方が伝わるんでしょうか。Bandcanpからコンスタントに作品をリリースし続けており、その数3ケタ越え。百戦錬磨のヒップホップビート職人。
本作は6曲収録ながらハスキーボイスのラッパーTrafficをゲストに迎えた「Relapse」以外は全て1分前後で終わる短編ビート集といった感じで、90年代風のメロウでレイドバックした酩酊感あるトラックがトータル10分程度収録されたコンパクトな作品。







Bishop Nehru / Elevators: Act I & II

Elevators: Act I & II


ニューヨーク出身の若手ラッパー、Bishop Nehruの1stアルバム。
「Act I: Ascension」からはじまるアルバム前半はKAYTRANADAが、「Act II: Free Falling」はじまる後半はMF DOOMがそれぞれプロデュース。エレベーターになぞらえた2部構成のアルバム。MF DOOMプロデュースのAct Ⅱのほうがややクラシックで生音多めだけど前半後半さほど曲調は変わらないように感じた。
若手でありながらトラップや三連譜、オートチューンなど流行の尻を追いかけ過ぎず、80~90年代のヒップホップを意識した太いビート感と時々ジャジーでソウルフルな曲をサンプリング(だと思う)したトラックがド渋い。流行のヒップホップのトラックが少し苦手な私にはドンズバだった。





Kilchhofer / The Book Room

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スイスのエクスペリメンタルプロデューサー、Kilchhoferのアルバム。
アマゾンの奥地のような土臭い音 meets 電子音。エクスぺリメンタル、ミニマルミュージック。マリンバ、コンガ、マラカスなどボタニカルというより土着的な生音と、幾何学的なシンセの不思議な絡み合い。キックが入らないアンビエントやドローン寄りの曲もあり、比較的アップダウンが少ないのでBGMとしてエンドレスリピート。







telepath & Agia / Unison






telepath & Agiaのアルバム『Unison』。
テレパシー能力者、仮想夢プラザ、2814など数多あるソロ、コラボユニット名義でネットを中心に活動しているヴェイパーウェイヴ史上最重要人物の1人、telepathが謎の(架空の?)人物Agiaと共作したアルバム3作目。アーバンで少し陽気なシーサイド・ドリーム・ポップとでも呼びたくなる80年代、オメガトライブ感。
眠気を誘うドローン、展開の少ないエクスペリメンタル、アンビエントなど抽象的でミステリアスな作品が多いtelepathの作品の中では聴きやすい部類に入る作品です。







Lay-Far / Never Good Enough for You (Feat. Stee Downes) 

NEVER GOOD ENOUGH FOR YOU



ロシアのDJ / プロデューサー、Lay-FarのEP。
ソウルやファンクなどブラックミュージックからの影響も感じられるハウス。軽快なチャカチャカしたパーカスとエレピが美しい。ゲストボーカルは少しハスキーな低音ボイスが特徴的なアイルランドのシンガーStee Downes。インストとリミックスも3曲収録。カップリングの「Blow My Mind」もほぼインストのハウス。





2018年5月7日月曜日

よく聴いた音楽 2018 1月・2月編




青い果実 / Aokaji

AOKAJI



ラッパーのMETEOR、ラッパー・トラックメーカーのKYN、SSWのbutaji、普段は個々で活動している3人によるヒップホップユニット、青い果実のデビューアルバム。何故か謎の覆面集団3人組という設定。
METEORの太い声とゆるいフロウのラップ、butajiのスモーキーでソウルフルな歌、そしてKYNはラップ・歌とトラックメイクを担当するマルチプレイヤーっぷり。凸凹トリオ。
アーバン・シティで洗練されたトラックに乗る、METEORの良い意味で野暮ったい感じのラップと、butajiの柔かで高音の伸びるボーカルのバランスもいい。ベースこそヒップホップでラップがメインだけど曲によっては結構ポップなので、ラップが苦手な人も聴きやすいアルバムだと思う。






テンテンコ / きけんなあなた

きけんなあなた


テンテンコの去年末配信リリースされていたEP『きけんなあなた』がCDでリリース。
ポップでありながらエレクトロニカ・ニューウェーブ・80年代歌謡など、ひとことで片づけられないクロスオーバーな音楽性。
サブカル殺しの一手ともいえる坂本慎太郎プロデュース曲「なんとなくあぶない」は気の抜けたスカスカ・ゆらゆら感が坂本慎太郎節。テンコさんの鼻にかかった癖のある歌声が乗っかるとまさしく”なんとなくあぶない”感じが出ていた。
個人的にはEspeciaにも多く楽曲提供をしていたPellycolo作曲のドリームポップ歌謡「夜間飛行」がお気に入りです。






Justin Timberlake / Man of the woods





Justin Timberlake、4枚目のアルバム『Man of the woods』。
ポップスという軸を保ちながらアルバム毎にテイストが変わるタイプの人。プロデューサーはお馴染みNeptunesとTimbaland。リリース前に公開されたアイリッシュ感強めなティザーで既に前作『The 20/20 Experience』のようなフォーマルなカッコつけたアルバムではない雰囲気が漂っていたけど、本作は”等身大の姿”がテーマらしい。
歪んだシンセを投入した攻めのリード曲「Filthy」こそアルバム全体からすると少し毛色が違うものの、ビートは打ち込みメイン、上モノはアコースティックな楽器をふんだんに取り入れた”森の男”というタイトルも納得のオーガニック・カントリー感溢れるダンサブルなポップス。私の推し曲は「Wave」と「Midnight Summer Jam」。






Thundercat / DRANK


DRANK [帯解説] (BRC568)


Thundercatが去年リリースしたアルバム『DRUNK』のチョップド・スクリュードリミックス盤『DRANK』(日本語読みはドレ~ンクが正しいらしい)。
私はチョップド・スクリュードと聞くとやはりVaporwaveのような出来を想像してしまうのだけど、公式リミックスなだけあってチョップド・スクリュードといってもキレイにまとまったリミックス盤だった。極端にピッチを上げたり下げたりした不安定なミックスというより、適度にスローダウンさせている感じです。曲順も再構築。
元々が良いので悪くなりようもないのだけどより角が取れてよりマイルドな聴き心地になった印象です。ほろ酔い気分。






Future Beat Alliance / Personal Data Collected: Pt. 1

No Return


デトロイトテクノの第一人者、Future Beat Allianceのアルバム。
ノンボーカルのスペーシーなテクノ・IDM。色々調べた結果、作品の詳細らしきものが全くと言っていいほど出てこないのだけど、おそらくキャリアを総括したベストアルバム。Pt.2と3もリリースされている。
ど頭の「Soundscape 49」の浮遊感、「FBA Theme」の無機質な音像や揺らぐシンセなど、全体に漂う壮大で神秘的な世界観はさながら宇宙空間。その深遠さにうっとりしつつ、目を瞑ってコズミックなサウンドスケープに身をゆだねたい。





GAGLE / VANTA BLACK

Vanta Black [国内盤CD] (JSPCDK1038)


仙台を拠点として活動するヒップホップユニットGAGLEのアルバム。
VANTA BLACKとは”世界で1番黒い人口物質”のことらしい。ファンキーとかブラックミュージック的な血の通った黒ではなく人工的な漆黒。本作の音色、音像など全体から受ける印象もそんな雰囲気です。
前作までのような生音を多く取り入れたジャジーでクラシックなヒップホップの匂いも感じるものの、打ち込みのビートやシンセが強い曲が増えたことで前作よりエレクトロニックで無機質な印象のアルバム。攻め立てるような早口で、矢継ぎ早に繰り出されるHUNGERの人間っぽいラップとの対比もおもしろい。
エキゾチックなトラックに挑発的な3MCのラップが乗る「和背負い feat. KGE THE SHADOWMEN & 鎮座DOPENESS」、漆黒の化学物質”VANTA BLACK”色が濃く出てる「?!!Chaos!!?」、前作までのGAGLEらしい「Always」など、違和感なく”らしさ”と新境地が共存していた。






haircuts for men / lftb v1




haircuts for menの『lftb v1』。ネット音楽。
lftbとはつまりLo-fi type beats。一応Vaporwave畑の人だけど、Lo-fiな音色のヒップホップ・エクスペリメンタルな作品がメインなビートメイカー。
本作はLo-fiヒップホップ色が強くどの曲にもメランコリックでミステリアスな魅力がある。蓄音機から再生されているようなノイズ交じりで柔かな音色。イヤホンよりスピーカー推奨。






Palm / Rock Island




ニューヨーク拠点で活動するマスロックバンド、Palmの1stアルバム。
マスロックの中でも特に複雑な変拍子を多様した奇妙な音楽性のバンド。同じパターンを繰り返しながら変化するミニマルミュージック的要素、ニューウェイヴ、サイケ、プログレ、時々エレクトリック…と、細かいジャンルをグイグイ飲み込んでたどり着いた不思議な音楽。ほぼ全曲に入っているトロピカルな速弾きスティースパン的な?間の抜けた音も謎の中毒性。
あれこれこねくり回しているようで、実は緻密に計算されていてギリギリ噛みあっている様がスリリングで美しい。アルバムを聴き終えたの”なんじゃこれ感”がクセになる。危険。






TUXEDO with ZAPP / SHY


TUXEDO with ZAPP / SHY "7inch"


Tuxedo with Zappの7"シングル。80’sディスコ・ブギーのレジェンド的存在であるバンド、ZappとTuxedoの新旧ディスコ・ブギーコラボ。
Zappのボーカル故・ロジャーのボーカル枠にそのままTuxedoが入ったみたいな形で、Tuxedoらしく、トークボックスが入る辺りはZappらしくもある。期待を裏切らないブギーでモダンなディスコチューン。





Black Eyed Peas / Street Livin'

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紅一点のファーギーが抜けて?再びトリオになったBlack Eyed Peasのシングル。
ジャジーで太いビートが特徴的な煙たいトラックに、銃や人種差別などの社会問題をテーマにしたシリアスなリリックと、なかなかヘビーな曲。ファーギー加入後15年近い間続いたポップな路線からのヒップホップ回帰。どうやらアルバムもこの方向性らしい。
個人的にBEPはミーハーな聴き方をしていて、アルバム『Elefunk』と『Monkey Bussiness』だけよく知っているのだけど、オーセンティックな方向に舵を切ったBEPも面白そうです。




2018年3月14日水曜日

2017年よく聴いたアルバム


長いこと更新もせずとっくに年も越しましたが気が向いたのでやってみました。
あまり一貫性もなくただ音楽をふらふらと聴き続けている私が去年よく聴いた作品群。




■Soulwax / From Deewee





Soulwaxが12年ぶりに突然リリースしたアルバム『From Deewee』。
エレクトロニックでいてバンドサウンド、ボーカルが主張し過ぎずインストもあり、アゲ過ぎでもサゲ過ぎでもない。全て中庸なところを押さえていて、聴く時の気分によって聴こえ方感じ方が違う摩訶不思議なアルバム。アルバムのテンションとしては淡々としているのだけど、どんな気分で聴いても何となくちょうどいい塩梅に耳になじんでくれるのでいつのまにか”迷ったらコレ”な心の寄りどころ的存在に。曲間無しなのでシームレスにヌルっと聴けるアルバム。






■N.E.R.D / NO ONE EVER REALLY DIES



年末リリースで7年ぶりにドロップされたN.E.R.Dの新作が滑り込み。
変則的で全体的に間が抜けたような印象は”らしさ”が強く出ている。でもサビには分かりやすいフック仕込んであってキャッチー、というバランスが心地よくてついつい手が伸びた。変態だけでは片づけ切れないファレル・ネプチューンズ節。客演の多さよ。1~7くらいまでは飽きずにまだ聴いてる。






■RHYMESTER / ダンサブル




RHYMESTER、11枚目のアルバム『ダンサブル』。
タイトルが示す通り、難しいこと抜きに踊ろうぜ!というアルバム。近年は毎回違うコンセプトをもとにアルバム制作をするライムスターの作品の中では比較的直球で快楽主義的な部分が強く出ていて分かりやすい作品だと思う。飲んでウェイウェイ言って揺れていれば確実に楽しくなれる。フロア向き。あとジャケが最高。ポップもブギーも生音もあり、エモもあれば爽やかもおふざけもあり。全部踊れて楽しい。彩り豊かな10曲入魂40分間のダンサブルタイム。
去年はこのアルバムが出てから急ピッチでライムスターにずぶずぶとハマっていったので個人的にライムスター元年とさせていただきます。






■藤井隆 / light showers




”90年代の音楽”をテーマに作られた、オリジナルとしては4枚目のアルバム。
ベースはポップであれ、今回はギターロック調、ハウス、シティポップ、NJSと90年代の要素が各曲にちりばめられている。プロデュース / アレンジはYTこと冨田謙さん。アルバム発売を前に公開された90年代CM風アルバムトレイラ―も今のファン層や芸人の枠を超えて話題に。ちなみにジャンパーは当たらなかった。
もうかれこれ5年近く、主に歌手・藤井隆としては何度もライブに足を運んでいるので、もはや客観視はできていないかもしれない。しかし藤井さんは贔屓目抜きでリリース毎に最高を更新してくれる。貴重な存在です。芸人はもとより俳優としての顔も併せ持つ多彩な方だけど、歌手としてのポテンシャルも計り知れない。






■Thundercat / DRUNK



Thundercat、4枚目のアルバム『DRUNK』。
AOR、エレクトロニカ、シンセポップ、ヒップホップなど様々なジャンルのクロスオーバー。Thundercatフィルターを通した進化系ブラックミュージックに。
見た目からは似ても似つかぬ繊細で高音メロウなボーカル、ファルセットの美しさも相まって甘い優しい印象なんだけど、時々本職?のバカテクベースプレイでビシビシ切り込んでくるメリハリ職人。このバランスが心地よい。アルバム全体的には物憂げでマイナー調。
24曲収録というと重たく感じ無くもないけど1曲3分くらいで進むのでテンポが良い。何年か前に出たFlying Lotusのアルバムもやたら回転が早かったような。BRAINFEEDERイズムかな。







■LEO今井 / Film Scum EP

Film Scum


正直、私はLEO今井についてMETAFIVEの人ということ以外何も知らない。でもこのEPはよく聴いた。テレ東で深夜に放送されていた「デッドストック」というドラマのサントラも兼ねたEP。リンクを開いてもらえば分かると思うけど今時珍しいホラーでオカルティックな内容のドラマで、そのドラマの空気感を聴覚で操っていた曲がこのEPに収録されている。
1~4は劇中のBGMとして使用されていた曲。内省的で陰鬱とした感情や衝動が渦巻くダークなインスト。どれもノイジーでエレクトロニック。中でも「Dead Stock4」は初見で確実に面食らう。ノスタルジック風な曲調から一転、最後の約40秒で突然訪れるスラッシュメタル。牙をむくようなシャウト。唖然としながら痺れるという新感覚。ダメな人はダメだと思うけど転調…というか、意表を突かれるプログレッシブな展開が好きな人にはドラッグです。
そんな不穏なインスト群が終了すると、最後5曲目はバンドサウンドでLEO今井ボーカルの新曲「On videotape」。最後に人の声やバンドの生音に触れることで正気に戻ってくれたような感覚になって少し安心できる。この情緒不安定な流れも面白かった。

5曲合わせても15分程度で聴けてしまうし、ドラマを知らなくても楽しめるのでお試し感覚で聴いてほしい作品です。






■AKLO×JAY'ED / Sorry...come back later EP




ラッパーAKLOとシンガーJAY'EDのスプリットEP『Sorry...come back later』。
夏頃のリリースということもあってか、ボーカルもラップもスムースでR&Bっぽいグルーヴの曲が並ぶ。アルバムトータルではクールな印象。プロデューサーはBACHLOGIC。
アートワークは大瀧 詠一の『A LONG VACATION』のジャケでもおなじみのイラストレーター永井博。90年代前半オマージュのMVも◎。
ちなみにリードで発表されていた「Different Man」はLEO今井の時にも出てきたデッドストックのオープニングでもある。あのドラマの音楽担当とは趣味が合うっぽい。






■The PLAYlist / Cahsing Goosebumps

CHASING GOOSEBUMPS [Analog]


DJ Jazzy Jeff & the Fresh Princeとしてお馴染みのJazzy Jeffによるプロジェクト、The PLAYlistのアルバム『Cahsing Goosebumps』。
若手を中心とした新たな才能と、Jazzy Jeff周りのベテランプロデューサーやシンガーがお互いのインスピレーションを持ち寄り、新たな音楽を作り出すことを目的としたPlaylist Retreatという2015年にはじまったプロジェクトが発展した結果、今回のアルバムリリースに至った。
メインボーカルにはソウルシンガーとしても既にキャリアがあるGlenn Lewisを迎えて1週間でレコーディング。ソウル・ジャズ・ヒップホップを中心としたミディアム~スロウな作風。
去年2月のリリースだけど年末に発見して以来今も聴き続けている作品。1度聴いてから今までリピートし続けているので早い段階で出会っていてもおそらく聴き続けていたはず。ということで年間ベスト入り。何を隠そうDJ JINレコメンド(アーティスト・DJが選ぶ2017年ベストディスク)。こんなところにもライムスター余波が。








■Visible Cloaks / Reassemblage

Reassemblage [ボーナストラック1曲のダウンロード・コードつき]



ポーランドの2人組Visible Cloaksのアルバム『Reassemblage』。
音のない自然の営みを音として具現化したような、繊細なスピリチュアルアンビエント・ニューエイジ。ふわふわと耳触り柔らかな丸みを帯びたシンセ、エキゾチックな楽器の音やパキパキとエッヂの立った電子音が混ざる瑞々しい世界。粒立った音像。
甲田益也子がフィーチャーされた「Valve」は唯一”人の声”が収録されており、スポークンワードと連動するように柔らかいシンセが重なる独特な世界観の曲(声とトラックが連動する感じはASA-CHANG&巡礼を思い出した)。そういったフックとなる曲もある。
作業用BGMというと少し雑な感じに聞こえがちだけど、いつ聴いても邪魔にならず気分や気持ちを落ち着かせてくれるので、何かしながら延々流していた。サイケな映像も良い。





■Shobaleader One / Elektrac




Shobaleader Oneのデビューアルバム『Elektrac』。
Squarepusherの過去の名曲をバンドアレンジで再現。ベースはもちろんSquarepusher。スタジオレコーディングではなくライブテイクをそのまま収録しているので、実質ライブ盤。基本エレクトロニックな曲をバンドで再現しているので、結果的にやたら音数が多くて攻めたフュージョンになっている。原曲よりスピーディで時々歓声も入る生感が私にはたまらなかった。去年ソニックマニアでライブも見たのだけど音圧と勢いに圧倒された。ライブテイクをそのまま収録したのもステージングへの自信の表れかもしれない。






■Tycho / Epock




Tychoの5thアルバム『Epock』。前2作から続く3部作が本作にて完結。新たにメンバーが正式加入し、ソロからバンド編成になったことでエレクトロニックなポストロックバンドに。
タイトで跳ねるような小気味よいドラム、ゆらめくように残響するシンセ、主張しすぎないギター、ベース。BPM130前後とほとんど一定で、楽器隊各パート見せ場があり、緩急ある展開で踊らせてもくれるというバンドと打ち込みの良いとこどり。一挙両得。”夜明け”や”芽吹き”とかそんな印象を受けるアルバム。






■Kamasi Washington / Harmony of Difference


ジャズサックス奏者・Kamasi Washingtonの2ndアルバム『Harmony of Difference』。
”Hermony of Differene”というタイトルで示された対位法という音楽的手法、異なる旋律の調和がテーマ。アルバム通して組曲として構成されており、本作の3分の1くらいの尺を占める最後の「Truth」で壮大なグランドフィナーレを迎える。キャッチー、スリリング、ムーディなど、各曲の色が出ていておもしろかった。
3枚組で3時間弱というフルボリュームどころじゃないボリュームでリリースされたデビューアルバム『The Epic』は、正直なところ長すぎて最後まで聴ききるにも一苦労だったけど、本作6曲入り30分とかなりタイトにまとまっているのでサクッと聴けてちょうどいい良い。起承転結がハッキリしていてアルバムの全体像を捉えるまで時間がかからなかった。初心者からジャズファンまで幅広い層からの支持もうなずける軽くて濃厚なアルバム。







■MISIA / MISIA SOUL JAZZ SESSION

MISIA SOUL JAZZ SESSION

MISIAのセルフカバーアルバム『MISIA SOUL JAZZ SESSION』。
MISIAが時々垣間見せるブラックな側面に焦点を当てた作品。誰もが耳にしたことがあるであろう自身の楽曲がよりソウルフルにアップデードされている。
元々ソウルフルで安定した歌唱力を持ったディーバタイプなシンガーであることはおそらく周知の事実だろうけど、楽曲面ではそこまでブラックミュージックに寄りすぎずポップベースな曲が多い印象だった。しかし本作は曲においてもそのブラック濃度グンと上げて私のようなブラックミュージック寄りの音が好きな人間を殺しに来た。ジャケなんかももう黒人の出で立ちですし。
ゲストにもトランペッター黒田卓也、ギタリストRaul Midón、ベーシストMarcus Millerと、その筋の名プレーヤーを招く力の入れよう。
特別MISIAのファンではないけど、バンドでスムースなソウル、ジャズ風味なアルバムはボーカルの持ち味ともがっちりハマっていてとても気持ちよかった。






■Vektroid / Seed & Synthetic Earth




かつてはMacintosh plus、情報デスクVIRTUALなど数々の変名を使いVaporwaveというジャンルを確立させるきっかかけを作った鬼才Vektroidの最新作。ここに来て満を持してのネット音楽枠です。最近は変名作品もあれど、Vektroid名義を中心にエレクトロニカやノイズ、エクスペリメンタルなんかがメインの音楽家として活動中。近年Vaporwave色は影を潜めている。
そんなVektorid最新作はポップでエモーショナルでカオティック。入り乱れる電子音とグルーヴの波に揉まれながら『Seed & Synthetic Earth』の世界を疾走するアトラクションのような。各曲表情豊かでゲームのサントラのようでもある。Vektroidの中では曲ごとに明確な風景が見えているのかもしれない。それくらい各曲の表情とその世界感がくっきりと打ち出された作品。アルバム1周で満腹になれる。できれば通して聴きたい。






■Nick Hakim / Green Twins





Nick Hakimの1stアルバム『Green Twins』。
スローでサイケデリックなLo-fiソウル。アンニュイな高音ボーカルとモヤのかかったように広がるトラックが絡む酩酊感が心地よい。聴くほどに脱力。哀愁漂うサックスパートが挟まれる「Miss Chew」なんかは鼓膜がトロトロ溶けていきそう。ブルージーなギターやもたげるように刻むドラムなど、気だるそうなバンド演奏も◎。





■Tuxedo / TuxedoⅡ


Tuxedoの2ndアルバム『TuxedoⅡ』。
ディスコ・ブギーな作風は相変わらずなのだけど、ダンディでややメロウな前作から肩の力が抜けて、シンガロングありクラップありの陽気なフロア仕様に。軽やかで少し若返ったような印象の2作目。前作同様ディスコ・ブギー・ファンクといった要素に弱い私は何の抵抗もなく聴き続けられた1枚だった。
個々で既に成功を収めている2人なのでいつまで活動していくのか疑問を持ち始めていけど、先月Zappとのコラボソング「Shy」の7”シングルがリリースされた。まだまだディスコ・ブギーで行けるっぽい。






■!!! / Shake The Shudder

Shake The Shudder [輸入盤CD / デジパック仕様 / ブックレット付き] (WARPCD283)_444



!!!の7thアルバム『Shake The Shudder』。
元々エレクトロニックでダンサブルなバンドで、根っこの部分は変わらないけど前作までの!!!がハッピーで陽気だとしたら、本作はクールでスカした印象のアルバム。どの曲も派手さはあまりないものの、淡々と踊らせてくれる。楽器隊はベケベケしていてファンキーなベースプレイが光る曲が多い。ファンクトロニカ感。
幕開け1曲目「The One 2」は聴いてびっくりソウルフル。でいてエレクトロニック。誰だか分からないけどほとんどのパートがソウルフルな女性ボーカル(たぶん黒人)の歌唱。この1曲目のソウルフルさんとは別に、8や10にも名もなき女性ボーカル(たぶん白人)登場する。







■the band apart / Memories to Go


the band apartの8thアルバム『Memories to go』。
ロックをベースに曲ごとに様々なジャンルの影響も感じられるのがバンアパらしさでもあると思うのだけど、本作は特にそういったアプローチが仕込んである。
爽やかなポップスからAOR、80年代シティポップ、時々HRHMを感じるフレーズまであり、耳触りはシンプルだけど実は複雑。でもトータルで散漫な印象にならない一本筋が通ったバランス感覚。7月のリリースを意識してか清涼感もありノスタルジックで、「雨上がりのミラージュ」や「お祭りの夜」などタイトルからも夏を感じる曲もある。

爽やかでメロディアスなギターリフや軽快なカッティングギターも良いのだけど、爽やか一辺倒で終わらない遊び心が随所にみられるので気が抜けない。特に曲終盤突然の転調から攻めのギターとドッスドスのツーバスで攻め散らかして終わる「Super high」や、イントロからアクセル全開で駆け出してアウトロではテンポダウンして終わる「BOOSTER」なんかは聴いてて脈が上がっちゃう。個人的に近年のバンアパは確実に当てに来るので間違いない。







■テンテンコ / Good Night Dub


テンテンコの自主制作CDRシリーズ第18弾『Good Night Dub』。
毎月1枚違うテーマでリリースされているテンテンコさんのCDR。テーマはダブ。ゴリゴリのノイズやIDMなどストイックなインストや、鼻にかかった声が印象的な歌モノが多いテンテンの新境地。
本作は全編インストでノンボーカル。ダブらしいエコーやリバーブでぐわんぐわん揺れるようなグルーヴの曲が並ぶ。湿度の高いぼんやりした夏の真夜中のような作品。酩酊感も◎。最後の「Bikibiki Dub」はテンテンらしいノイジーでシンセライクな攻め曲。







■テンテンコ / Deep & Moistures 1


テンテンコの自主制作CDRシリーズ第23弾『 Deep & Moistures 1』。こちらもインスト。
テクノ・ハウス・ベースミュージックなんかの影響を受けた、高速BPM・重低音連打が特徴のジャンル、JUKEがテーマ。少し間の抜けた音をサンプリング。抜きどころとキレのバランスがいい塩梅。テンテン流のJUKE。







■tricot / 3




日本のロックバンド、tricotの3rdアルバム『3』。
力強い芯のあるボーカル、女性らしいコーラスの繊細さに、変拍子と転調を繰り返すテクニカルで武骨な演奏の合わせ技。キャッチーなメロもふんだんに、でも歌詞は皮肉っぽくてやや影があって…と、tricotワールド炸裂。じゃなくて爆裂。”唯一無二”という言葉がしっくり来るバンドです。アッパーが多くて飛ばした印象のアルバム。特に「18,19」は聴いてるこっちの目が回るほど転調が多くてやりたい放題。ライブで聴きたい。







■MULATU ASTATKE / Mulatu of Ethiopia

MULATU OF ETHIOPIA [帯・ボーナストラックDLコード・日本語解説付国内仕様盤]


MULATU ASTATKEのアルバム『Mulatu of Ethiopia』。
ヴィブラフォンやコンガの奏者でエチオピアジャズの創始者。レジェンド的存在。72年の作品なので厳密に言うと2017ではないけど、リイシューしたしよく聴いたので2017としておきます。
ジャンルはジャズ、ファンク、ラテンのクロスオーバー…というと少し物足りなくて、同じアフリカでもレゲエとは違う南国エチオピアで育まれた民族音楽独特のエキゾチックさと、まったりとしたリズムが終始良い湯加減のインストジャズ。レアグルーヴ。
ドラムやベースよりヴィブラフォンを初めとした上モノの存在感が強く、中でも気になったのが何やら呪術的な儀式に使われそうなピロピロした尺八のような笛の音色。これは尺八でもフルートでもなくワシントという竹製の笛の音らしい。エチオジャズには欠かせない楽器のひとつとのこと。勉強になる。参考→(【音楽】エチオ・ジャズの歴史とその魅力







■Diskette Romances / Diskette Romances





ここからはネット音楽枠。台湾のビートメイカーDiskette Romancesのアルバム『Diskette Romances』。
サンプリング・ループ系のアンビエント~ニューエイジ。最近はVaporwaveと言ってもいろんな方向性があるけど、これは奇をてらうような演出がある作品ではなく、#Riversideというタグがうなづける優雅なアンビエント。ザラッとした音質のLo-fiさが良い意味で雑味として生きていてそれも◎。あとジャケットのインパクト。年間ベストジャケのひとつです。






■バーチャル Paragon ™ / World Leaders




フランスのビートメイカー、バーチャル Paragon ™ のアルバム『World Leaders』。
こちらもワンフレーズのループ系。やたら小奇麗でスタイリッシュな印象のアンビエント。講習の時とかに見せられる映像で薄く流れてそうな公共感。ラスト2曲だけ少し様子がおかしい。特に最後の「2020  The  Fall」は深いリバーブがかかったLo-fiな音色に急激なピッチの上下運動を繰り返す、Vaporwaveの中でもクラシックなタイプの曲。ジャケットや曲名から察するに政治的なメッセージを込められているのかもしれない。最後ひずんだ2曲でシニカルなメッセージが込められている…と捉えるのは深読みしすぎかな。






■ΣPSON / CASCADIA






アメリカのビートメイカーΣPSONの『CASCADIA』。
Vaporwaveの中で更に無数に存在するマイクロジャンルのひとつ、late night lo-fi系の作品。ムーディなスムースジャズやAORのスクリュードでよりスロウになったリズムと、歪みというより倍速録音したカセットのようなこもった音質、リバーブ・エコーがかかった酩酊感など、文字通りlate nightでlo-fiな聴き心地。本作はA面で、『ARCADIA』というB面も存在する。どちらも同じくlate night lo-fiたる作風。個人的には本作の方がテンポが遅い曲が多く、夜感が強くて再生頻度も多かった。






■FM Skyline / Deluxe Memory Suite™






アメリカのビートメイカー、FM Skylineのアルバム『Deluxe Memory Suite™』。
チルアウトで南国のユートピア感が強いリゾートアンビエント…かな。時々lo-fiな音色の曲も混じっていて私好みだった。とにかく無心で再生できて邪魔にならない。






LifeMod / Virtual Skies Ⅱ





LifeModの『Virtual Skies Ⅱ』。
ヒーリングミュージック・ニューエイジ寄り。アフリカのサバンナを思わせるような野性味溢れるナショナルジオグラフィック的世界が広がっている。チョップド・スクリュードやループといったVaporwaveにおける王道な手法が用いられた曲もあり、地球規模の癒しの要素とクラシックなVaporwaveを行き来して不思議な感覚になれる作品。





ということで相当絞りましたが枚数考えず挙げ続けたら計27作品も。特に順位を付けたつもりもなく思いついた順で。こうして並べてみると、あまりジャンルにとらわれず聴こうとしても似た傾向の作品を聴いてしまうものですね。総じてブラックミュージックっぽい割と踊れるセレクトになってました。ロックをはじめHR/HM関係もめっきり弱くなってしまった。

ちなみに曲単位だとフィロソフィーのダンスの「バッド・パラダイム」とか谷本早也歌さんの「PALPITO」とかよく聴きました。


こういうの書いておくと自分の記憶にも残りやすいことが分かったのでまた定期的に細々やっていこうかと思います。