2018年5月7日月曜日

よく聴いた音楽 2018 1月・2月編




青い果実 / Aokaji

AOKAJI



ラッパーのMETEOR、ラッパー・トラックメーカーのKYN、SSWのbutaji、普段は個々で活動している3人によるヒップホップユニット、青い果実のデビューアルバム。何故か謎の覆面集団3人組という設定。
METEORの太い声とゆるいフロウのラップ、butajiのスモーキーでソウルフルな歌、そしてKYNはラップ・歌とトラックメイクを担当するマルチプレイヤーっぷり。凸凹トリオ。
アーバン・シティで洗練されたトラックに乗る、METEORの良い意味で野暮ったい感じのラップと、butajiの柔かで高音の伸びるボーカルのバランスもいい。ベースこそヒップホップでラップがメインだけど曲によっては結構ポップなので、ラップが苦手な人も聴きやすいアルバムだと思う。






テンテンコ / きけんなあなた

きけんなあなた


テンテンコの去年末配信リリースされていたEP『きけんなあなた』がCDでリリース。
ポップでありながらエレクトロニカ・ニューウェーブ・80年代歌謡など、ひとことで片づけられないクロスオーバーな音楽性。
サブカル殺しの一手ともいえる坂本慎太郎プロデュース曲「なんとなくあぶない」は気の抜けたスカスカ・ゆらゆら感が坂本慎太郎節。テンコさんの鼻にかかった癖のある歌声が乗っかるとまさしく”なんとなくあぶない”感じが出ていた。
個人的にはEspeciaにも多く楽曲提供をしていたPellycolo作曲のドリームポップ歌謡「夜間飛行」がお気に入りです。






Justin Timberlake / Man of the woods





Justin Timberlake、4枚目のアルバム『Man of the woods』。
ポップスという軸を保ちながらアルバム毎にテイストが変わるタイプの人。プロデューサーはお馴染みNeptunesとTimbaland。リリース前に公開されたアイリッシュ感強めなティザーで既に前作『The 20/20 Experience』のようなフォーマルなカッコつけたアルバムではない雰囲気が漂っていたけど、本作は”等身大の姿”がテーマらしい。
歪んだシンセを投入した攻めのリード曲「Filthy」こそアルバム全体からすると少し毛色が違うものの、ビートは打ち込みメイン、上モノはアコースティックな楽器をふんだんに取り入れた”森の男”というタイトルも納得のオーガニック・カントリー感溢れるダンサブルなポップス。私の推し曲は「Wave」と「Midnight Summer Jam」。






Thundercat / DRANK


DRANK [帯解説] (BRC568)


Thundercatが去年リリースしたアルバム『DRUNK』のチョップド・スクリュードリミックス盤『DRANK』(日本語読みはドレ~ンクが正しいらしい)。
私はチョップド・スクリュードと聞くとやはりVaporwaveのような出来を想像してしまうのだけど、公式リミックスなだけあってチョップド・スクリュードといってもキレイにまとまったリミックス盤だった。極端にピッチを上げたり下げたりした不安定なミックスというより、適度にスローダウンさせている感じです。曲順も再構築。
元々が良いので悪くなりようもないのだけどより角が取れてよりマイルドな聴き心地になった印象です。ほろ酔い気分。






Future Beat Alliance / Personal Data Collected: Pt. 1

No Return


デトロイトテクノの第一人者、Future Beat Allianceのアルバム。
ノンボーカルのスペーシーなテクノ・IDM。色々調べた結果、作品の詳細らしきものが全くと言っていいほど出てこないのだけど、おそらくキャリアを総括したベストアルバム。Pt.2と3もリリースされている。
ど頭の「Soundscape 49」の浮遊感、「FBA Theme」の無機質な音像や揺らぐシンセなど、全体に漂う壮大で神秘的な世界観はさながら宇宙空間。その深遠さにうっとりしつつ、目を瞑ってコズミックなサウンドスケープに身をゆだねたい。





GAGLE / VANTA BLACK

Vanta Black [国内盤CD] (JSPCDK1038)


仙台を拠点として活動するヒップホップユニットGAGLEのアルバム。
VANTA BLACKとは世界で1番黒い人口物質のことらしい。ファンキーとかブラックミュージック的な血の通った黒ではなく人工的な漆黒。本作の音色、音像など全体から受ける印象もそんな感じです。
前作までのような生音を多く取り入れたジャジーでクラシックなヒップホップの匂いも感じるものの、打ち込みのビートやシンセが強い曲が増えたことで前作よりエレクトロニックで無機質な印象のアルバム。攻め立てるような早口で矢継ぎ早に繰り出されるHUNGERの人間っぽいラップとの対比もおもしろい。
エキゾチックなトラックに挑発的な3MCのラップが乗る「和背負い feat. KGE THE SHADOWMEN & 鎮座DOPENESS」、漆黒の化学物質”VANTA BLACK”色が濃く出てる「?!!Chaos!!?」、前作までのGAGLEらしい「Always」など、違和感なく”らしさ”と新境地が共存していた。






haircuts for men / lftb v1




haircuts for menの『lftb v1』。ネット音楽。
lftbとはつまりLo-fi type beats。一応Vaporwave畑の人だけど、Lo-fiな音色のヒップホップ・エクスペリメンタルな作品がメインなビートメイカー。
本作はLo-fiヒップホップ色が強くどの曲にもメランコリックでミステリアスな魅力がある。蓄音機から再生されているようなノイズ交じりで柔かな音色。イヤホンよりスピーカー推奨。






Palm / Rock Islan




ニューヨーク拠点で活動するマスロックバンド、Palmの1stアルバム。
マスロックの中でも特に複雑な変拍子を多様した奇妙な音楽性のバンド。同じパターンを繰り返しながら変化するミニマルミュージック的要素、ニューウェイヴ、サイケ、プログレ、時々エレクトリック…と、細かいジャンルをグイグイ飲み込んでたどり着いた不思議な音楽。ほぼ全曲に入っているトロピカルな速弾きスティースパン的な?間の抜けた音も謎の中毒性。
あれこれこねくり回しているようで、実は緻密に計算されていてギリギリ噛みあっている様がスリリングで美しい。アルバムを聴き終えたの”なんじゃこれ感”がクセになる。危険。






TUXEDO with ZAPP / SHY


TUXEDO with ZAPP / SHY "7inch"


Tuxedo with Zappの7"シングル。80’sディスコ・ブギーのレジェンド的存在であるバンド、ZappとTuxedoの新旧ディスコ・ブギーコラボ。
Zappのボーカル故・ロジャーのボーカル枠にそのままTuxedoが入ったみたいな形で、Tuxedoらしく、トークボックスが入る辺りはZappらしくもある。期待を裏切らないブギーでモダンなディスコチューン。





Black Eyed Peas / Street Livin'

「black eyed peas streets livin」の画像検索結果


紅一点のファーギーが抜けて?再びトリオになったBlack Eyed Peasのシングル。
ジャジーで太いビートが特徴的な煙たいトラックに、銃や人種差別などの社会問題をテーマにしたシリアスなリリックと、なかなかヘビー。ファーギー加入後15年近い間続いたポップな路線からのヒップホップ回帰。どうやらアルバムもこの方向性らしい。
個人的にBEPはミーハーな聴き方をしていて、アルバム『Elefunk』と『Monkey Bussiness』だけよく知っているのだけど、オーセンティックな方向に舵を切ったBEPも面白そうです。




2018年3月14日水曜日

2017年よく聴いたアルバム


長いこと更新もせずとっくに年も越しましたが気が向いたのでやってみました。
あまり一貫性もなくただ音楽をふらふらと聴き続けている私が去年よく聴いた作品群。




■Soulwax / From Deewee





Soulwaxが12年ぶりに突然リリースしたアルバム『From Deewee』。
エレクトロニックでいてバンドサウンド、ボーカルが主張し過ぎずインストもあり、アゲ過ぎでもサゲ過ぎでもない。全て中庸なところを押さえていて、聴く時の気分によって聴こえ方感じ方が違う摩訶不思議なアルバム。アルバムのテンションとしては淡々としているのだけど、どんな気分で聴いても何となくちょうどいい塩梅に耳になじんでくれるのでいつのまにか”迷ったらコレ”な心の寄りどころ的存在に。曲間無しなのでシームレスにヌルっと聴けるアルバム。






■N.E.R.D / NO ONE EVER REALLY DIES



年末リリースで7年ぶりにドロップされたN.E.R.Dの新作が滑り込み。
変則的で全体的に間が抜けたような印象は”らしさ”が強く出ている。でもサビには分かりやすいフック仕込んであってキャッチー、というバランスが心地よくてついつい手が伸びた。変態だけでは片づけ切れないファレル・ネプチューンズ節。客演の多さよ。1~7くらいまでは飽きずにまだ聴いてる。






■RHYMESTER / ダンサブル




RHYMESTER、11枚目のアルバム『ダンサブル』。
タイトルが示す通り、難しいこと抜きに踊ろうぜ!というアルバム。近年は毎回違うコンセプトをもとにアルバム制作をするライムスターの作品の中では比較的直球で快楽主義的な部分が強く出ていて分かりやすい作品だと思う。飲んでウェイウェイ言って揺れていれば確実に楽しくなれる。フロア向き。あとジャケが最高。ポップもブギーも生音もあり、エモもあれば爽やかもおふざけもあり。全部踊れて全部楽しい。彩り豊かな10曲入魂40分間のダンサブルタイム。
去年はこのアルバムが出てから急ピッチでライムスターにずぶずぶとハマっていったので個人的にライムスター元年とさせていただきます。






■藤井隆 / light showers




”90年代の音楽”をテーマに作られた、オリジナルとしては4枚目のアルバム。
ベースはポップであれ、今回はギターロック調、ハウス、シティポップ、NJSと90年代の要素が各曲にちりばめられている。プロデュース / アレンジはYTこと冨田謙さん。アルバム発売を前に公開された90年代CM風アルバムトレイラ―も今のファン層や芸人の枠を超えて話題に。ちなみにジャンパーは当たらなかった。
もうかれこれ5年近く、主に歌手・藤井隆としては何度もライブに足を運んでいるので、もはや客観視はできていないかもしれない。しかし藤井さんは贔屓目抜きでリリース毎に最高を更新してくれる。貴重な存在です。芸人はもとより俳優としての顔も併せ持つ多彩な方だけど、歌手としてのポテンシャルも計り知れない。






■Thundercat / DRUNK



Thundercat、4枚目のアルバム『DRUNK』。
AOR、エレクトロニカ、シンセポップ、ヒップホップなど様々なジャンルのクロスオーバー。Thundercatフィルターを通した進化系ブラックミュージックに。
見た目からは似ても似つかぬ繊細で高音メロウなボーカル、ファルセットの美しさも相まって甘い優しい印象なんだけど、時々本職?のバカテクベースプレイでビシビシ切り込んでくるメリハリ職人。このバランスが心地よい。アルバム全体的には物憂げでマイナー調。
24曲収録というと重たく感じ無くもないけど1曲3分くらいで進むのでテンポが良い。何年か前に出たFlying Lotusのアルバムもやたら回転が早かったような。BRAINFEEDERイズムかな。







■LEO今井 / Film Scum EP

Film Scum


正直、私はLEO今井についてMETAFIVEの人ということ以外何も知らない。でもこのEPはよく聴いた。テレ東で深夜に放送されていた「デッドストック」というドラマのサントラも兼ねたEP。リンクを開いてもらえば分かると思うけど今時珍しいホラーでオカルティックな内容のドラマで、そのドラマの空気感を聴覚で操っていた曲がこのEPに収録されている。
1~4は劇中のBGMとして使用されていた曲。内省的で陰鬱とした感情や衝動が渦巻くダークなインスト。どれもノイジーでエレクトロニック。中でも「Dead Stock4」は初見で確実に面食らう。ノスタルジック風な曲調から一転、最後の約40秒間で繰り広げられる突然のスラッシュメタル。牙をむくようなシャウト。唖然としながら痺れる、という新感覚。ダメな人はダメだと思うけど転調…というか、意表を突かれるプログレッシブな展開が好きな人にはドラッグです。
そんな不穏なインスト群が終了すると、最後5曲目はバンドサウンドでLEO今井ボーカルの新曲「On videotape」。最後に人の声やバンドの生音に触れることで正気に戻ってくれたような感覚になって少し安心できる。この情緒不安定な流れも面白かった。

5曲合わせても15分程度で聴けてしまうし、ドラマを知らなくても楽しめるのでお試し感覚で聴いてほしい作品です。






■AKLO×JAY'ED / Sorry...come back later EP




ラッパーAKLOとシンガーJAY'EDのスプリットEP『Sorry...come back later』。
夏頃のリリースということもあってか、ボーカルもラップもスムースでR&Bっぽいグルーヴの曲が並ぶ。アルバムトータルではクールな印象。プロデューサーはBACHLOGIC。
アートワークは大瀧 詠一の『A LONG VACATION』のジャケでもおなじみのイラストレーター永井博。90年代前半オマージュのMVも◎。
ちなみにリードで発表されていた「Different Man」はLEO今井の時にも出てきたデッドストックのオープニングでもある。あのドラマの音楽担当とは趣味が合うっぽい。






■The PLAYlist / Cahsing Goosebumps

CHASING GOOSEBUMPS [Analog]


DJ Jazzy Jeff & the Fresh Princeとしてお馴染みのJazzy Jeffによるプロジェクト、The PLAYlistのアルバム『Cahsing Goosebumps』。
若手を中心とした新たな才能と、Jazzy Jeff周りのベテランプロデューサーやシンガーがお互いのインスピレーションを持ち寄り、新たな音楽を作り出すことを目的としたPlaylist Retreatという2015年にはじまったプロジェクトが発展した結果、今回のアルバムリリースに至った模様。
メインボーカルにはソウルシンガーとしても既にキャリアがあるGlenn Lewisを迎えて1週間でレコーディングされた。ソウル・ジャズ・ヒップホップを中心としたミディアム~スロウな作風。
去年2月のリリースだけど年末に発見して以来今も聴き続けている作品。1度聴いてから今までリピートし続けているので早い段階で出会っていてもおそらく聴き続けていたはず。ということで年間ベスト入り。何を隠そうDJ JINレコメンド(アーティスト・DJが選ぶ2017年ベストディスク)。こんなところにもライムスター余波が。








■Visible Cloaks / Reassemblage

Reassemblage [ボーナストラック1曲のダウンロード・コードつき]




ポーランドの2人組Visible Cloaksのアルバム『Reassemblage』。
音のない自然の営みを音として具現化したような、繊細なスピリチュアルアンビエント・ニューエイジ。ふわふわと耳触り柔らかな丸みを帯びたシンセ、エキゾチックな楽器の音やパキパキとエッヂの立った電子音が混ざる瑞々しい世界。粒立った音像。
甲田益也子がフィーチャーされた「Valve」は唯一”人の声”が収録されており、スポークンワードと連動するように柔らかいシンセが重なる独特な世界観の曲(声とトラックが連動する感じはASA-CHANG&巡礼を思い出した)。そういったフックとなる曲もある。
作業用BGMというと少し雑な感じに聞こえがちだけど、いつ聴いても邪魔にならず気分や気持ちを落ち着かせてくれるので、何かしながら延々流していた。サイケな映像も良い。





■Shobaleader One / Elektrac




Shobaleader Oneのデビューアルバム『Elektrac』。
Squarepusherの過去の名曲をバンドアレンジで再現。ベースはもちろんSquarepusher。スタジオレコーディングではなくライブテイクをそのまま収録しているので、実質ライブ盤。基本エレクトロニックな曲をバンドで再現しているので、結果的にやたら音数が多くて攻めたフュージョンになっている。原曲よりスピーディで時々歓声も入る生感が私にはたまらなかった。去年ソニックマニアでライブも見たのだけど音圧と勢いに圧倒された。ライブテイクをそのまま収録したのもステージングへの自信の表れかもしれない。






■Tycho / Epock




Tychoの5thアルバム『Epock』。前2作から続く3部作が本作にて完結。新たにメンバーが正式加入し、ソロからバンド編成になったことでエレクトロニックなポストロックバンドに。
タイトで跳ねるような小気味よいドラム、ゆらめくように残響するシンセ、主張しすぎないギター、ベース。BPM130前後とほとんど一定でありながら淡々とせず、楽器隊各パート見せ場があり、緩急ある展開で踊らせてもくれるというバンドと打ち込みの良いとこどり。一挙両得。”夜明け”や”芽吹き”とかそんな印象を受けるアルバム。






■Kamasi Washington / Harmony of Difference


ジャズサックス奏者・Kamasi Washingtonの2ndアルバム『Harmony of Difference』。
”Hermony of Differene”というタイトルで示された対位法という音楽的手法、異なる旋律の調和がテーマ。アルバム通して組曲として構成されており、本作の3分の1くらいの尺を占める最後の「Truth」で壮大なグランドフィナーレを迎える。キャッチー、スリリング、ムーディなど、各曲の色が出ていておもしろかった。
3枚組で3時間弱というフルボリュームどころじゃないボリュームでリリースされたデビューアルバム『The Epic』は、正直なところ長すぎて最後まで聴ききるにも一苦労だったけど、本作6曲入り30分とかなりタイトにまとまっているのでサクッと聴けてちょうどいい良い。起承転結がハッキリしていてアルバムの全体像を捉えるまで時間がかからなかった。初心者からジャズファンまで幅広い層からの支持もうなずける軽くて濃厚なアルバム。







■MISIA / MISIA SOUL JAZZ SESSION

MISIA SOUL JAZZ SESSION

MISIAのセルフカバーアルバム『MISIA SOUL JAZZ SESSION』。
MISIAが時々垣間見せるブラックな側面に焦点を当てた作品。誰もが耳にしたことがあるであろう自身の楽曲がよりソウルフルにアップデードされている。
元々ソウルフルで安定した歌唱力を持ったディーバタイプなシンガーであることはおそらく周知の事実だろうけど、楽曲面ではそこまでブラックミュージックに寄りすぎずポップベースな曲が多い印象だった。しかし本作は曲においてもそのブラック濃度グンと上げて私のようなブラックミュージック寄りの音が好きな人間を殺しに来た。ジャケなんかももう黒人の出で立ちですし。
ゲストにもトランペッター黒田卓也、ギタリストRaul Midón、ベーシストMarcus Millerと、その筋の名プレーヤーを招く力の入れよう。
特別MISIAのファンではないけど、バンドでスムースなソウル、ジャズ風味なアルバムはボーカルの持ち味ともがっちりハマっていてとても気持ちよかった。






■Vektroid / Seed & Synthetic Earth




かつてはMacintosh plus、情報デスクVIRTUALなど数々の変名を使いVaporwaveというジャンルを確立させるきっかかけを作った鬼才Vektroidの最新作。ここに来て満を持してのネット音楽枠です。最近は変名作品もあれど、Vektroid名義を中心にエレクトロニカやノイズ、エクスペリメンタルなんかがメインの音楽家として活動中。近年Vaporwave色は影を潜めている。
そんなVektorid最新作はポップでエモーショナルでカオティック。入り乱れる電子音とグルーヴの波に揉まれながら『Seed & Synthetic Earth』の世界を疾走するアトラクションのような。各曲表情豊かでゲームのサントラのようでもある。Vektroidの中では曲ごとに明確な風景が見えているのかもしれない。それくらい各曲の表情とその世界感がくっきりと打ち出された作品。アルバム1周で満腹になれる。できれば通して聴きたい。






■Nick Hakim / Green Twins





Nick Hakimの1stアルバム『Green Twins』。
スローでサイケデリックなLo-fiソウル。アンニュイな高音ボーカルとモヤのかかったように広がるトラックが絡む酩酊感が心地よい。聴くほどに脱力。哀愁漂うサックスパートが挟まれる「Miss Chew」なんかは鼓膜がトロトロ溶けていきそう。ブルージーなギターやもたげるように刻むドラムなど、気だるそうなバンド演奏も◎。





■Tuxedo / TuxedoⅡ


Tuxedoの2ndアルバム『TuxedoⅡ』。
ディスコ・ブギーな作風は相変わらずなのだけど、ダンディでややメロウな前作から肩の力が抜けて、シンガロングありクラップありの陽気なフロア仕様に。軽やかで少し若返ったような印象の2作目。前作同様ディスコ・ブギー・ファンクといった要素に弱い私は何の抵抗もなく聴き続けられた1枚だった。
個々で既に成功を収めている2人なのでいつまで活動していくのか疑問を持ち始めていけど、先月Zappとのコラボソング「Shy」の7”シングルがリリースされた。まだまだディスコ・ブギーで行けるっぽい。






■!!! / Shake The Shudder

Shake The Shudder [輸入盤CD / デジパック仕様 / ブックレット付き] (WARPCD283)_444



!!!の7thアルバム『Shake The Shudder』。
元々エレクトロニックでダンサブルなバンドで、根っこの部分は変わらないけど前作までの!!!がハッピーで陽気だとしたら、本作はクールでスカした印象のアルバム。どの曲も派手さはあまりないものの、淡々と踊らせてくれる。楽器隊はベケベケしていてファンキーなベースプレイが光る曲が多い。ファンクトロニカ感。
幕開け1曲目「The One 2」は聴いてびっくりソウルフル。でいてエレクトロニック。誰だか分からないけどほとんどのパートがソウルフルな女性ボーカル(たぶん黒人)の歌唱。この1曲目のソウルフルさんとは別に、8や10にも名もなき女性ボーカル(たぶん白人)登場する。







■the band apart / Memories to Go


the band apartの8thアルバム『Memories to go』。
ロックをベースに曲ごとに様々なジャンルの影響も感じられるのがバンアパらしさでもあると思うのだけど、本作は特にそういったアプローチが仕込んである。
爽やかなポップスからAOR、80年代シティポップ、時々HRHMを感じるフレーズまであり、耳触りはシンプルだけど実は複雑。でもトータルで散漫な印象にならない一本筋が通ったバランス感覚。7月のリリースを意識してか清涼感もありノスタルジックで、「雨上がりのミラージュ」や「お祭りの夜」などタイトルからも夏を感じる曲もある。

爽やかでメロディアスなギターリフや軽快なカッティングギターも良いのだけど、爽やか一辺倒で終わらない遊び心が随所にみられるので気が抜けない。特に曲終盤突然の転調から攻めのギターとドッスドスのツーバスで攻め散らかして終わる「Super high」や、イントロからアクセル全開で駆け出してアウトロではテンポダウンして終わる「BOOSTER」なんかは聴いてて脈が上がっちゃう。個人的に近年のバンアパは確実に当てに来るので間違いない。







■テンテンコ / Good Night Dub


テンテンコの自主制作CDRシリーズ第18弾『Good Night Dub』。
毎月1枚違うテーマでリリースされているテンテンコさんのCDR。テーマはダブ。ゴリゴリのノイズやIDMなどストイックなインストや、鼻にかかった声が印象的な歌モノが多いテンテンの新境地。
本作は全編インストでノンボーカル。ダブらしいエコーやリバーブでぐわんぐわん揺れるようなグルーヴの曲が並ぶ。湿度の高いぼんやりした夏の真夜中のような作品。酩酊感も◎。最後の「Bikibiki Dub」はテンテンらしいノイジーでシンセライクな攻め曲。







■テンテンコ / Deep & Moistures 1


テンテンコの自主制作CDRシリーズ第23弾『 Deep & Moistures 1』。こちらもインスト。
テクノ・ハウス・ベースミュージックなんかの影響を受けた、高速BPM・重低音連打が特徴のジャンル、JUKEがテーマ。少し間の抜けた音をサンプリング。抜きどころとキレのバランスがいい塩梅。テンテン流のJUKE。







■tricot / 3




日本のロックバンド、tricotの3rdアルバム『3』。
力強い芯のあるボーカル、女性らしいコーラスの繊細さに、変拍子と転調を繰り返すテクニカルで武骨な演奏の合わせ技。キャッチーなメロもふんだんに、でも歌詞は皮肉っぽくてやや影があって…と、tricotワールド炸裂。じゃなくて爆裂。”唯一無二”という言葉がしっくり来るバンドです。アッパーが多くて飛ばした印象のアルバム。特に「18,19」は聴いてるこっちの目が回るほど転調が多くてやりたい放題。ライブで聴きたい。







■MULATU ASTATKE / Mulatu of Ethiopia

MULATU OF ETHIOPIA [帯・ボーナストラックDLコード・日本語解説付国内仕様盤]


MULATU ASTATKEのアルバム『Mulatu of Ethiopia』。
ヴィブラフォンやコンガの奏者でエチオピアジャズの創始者。レジェンド的存在。72年の作品なので厳密に言うと2017ではないけど、リイシューしたしよく聴いたので2017としておきます。
ジャンルはジャズ、ファンク、ラテンのクロスオーバー…というと少し物足りなくて、同じアフリカでもレゲエとは違う南国エチオピアで育まれた民族音楽独特のエキゾチックさと、まったりとしたリズムが終始良い湯加減のインストジャズ。まさしくレアグルーヴ。
ドラムやベースよりヴィブラフォンを初めとした上モノの存在感が強く、中でも気になったのが何やら呪術的な儀式に使われそうなピロピロした尺八のような笛の音色。これは尺八でもフルートでもなくワシントという竹製の笛の音らしい。エチオジャズには欠かせない楽器のひとつとのこと。勉強になる。参考→(【音楽】エチオ・ジャズの歴史とその魅力







■Diskette Romances / Diskette Romances





ここからはネット音楽枠。台湾のビートメイカーDiskette Romancesのアルバム『Diskette Romances』。
サンプリング・ループ系のアンビエント~ニューエイジ。最近はVaporwaveと言ってもいろんな方向性があるけど、これは奇をてらうような演出がある作品ではなく、#Riversideというタグがうなづける優雅なアンビエント。ザラッとした音質のLo-fiさが良い意味で雑味として生きていてそれも◎。あとジャケットのインパクト。年間ベストジャケのひとつです。






■バーチャル Paragon ™ / World Leaders




フランスのビートメイカー、バーチャル Paragon ™ のアルバム『World Leaders』。
こちらもワンフレーズのループ系。やたら小奇麗でスタイリッシュな印象のアンビエント。講習の時とかに見せられる映像で薄く流れてそうな公共感。ラスト2曲だけ少し様子がおかしい。特に最後の「2020  The  Fall」は深いリバーブがかかったLo-fiな音色に急激なピッチの上下運動を繰り返す、Vaporwaveの中でもクラシックなタイプの曲。ジャケットや曲名から察するに政治的なメッセージを込められているのかもしれない。最後ひずんだ2曲でシニカルなメッセージが込められている…と捉えるのは深読みしすぎかな。






■ΣPSON / CASCADIA






アメリカのビートメイカーΣPSONの『CASCADIA』。
Vaporwaveの中で更に無数に存在するマイクロジャンルのひとつ、late night lo-fi系の作品。ムーディなスムースジャズやAORのスクリュードでよりスロウになったリズムと、歪みというより倍速録音したカセットのようなこもった音質、リバーブ・エコーがかかった酩酊感など、文字通りlate nightでlo-fiな聴き心地。本作はA面で、『ARCADIA』というB面も存在する。どちらも同じくlate night lo-fiたる作風。個人的には本作の方がテンポが遅い曲が多く、夜感が強くて再生頻度も多かった。






■FM Skyline / Deluxe Memory Suite™






アメリカのビートメイカー、FM Skylineのアルバム『Deluxe Memory Suite™』。
チルアウトで南国のユートピア感が強いリゾートアンビエント…かな。時々lo-fiな音色の曲も混じっていて私好みだった。とにかく無心で再生できて邪魔にならない。






LifeMod / Virtual Skies Ⅱ





LifeModの『Virtual Skies Ⅱ』。
ヒーリングミュージック・ニューエイジ寄り。アフリカのサバンナを思わせるような野性味溢れるナショナルジオグラフィック的世界が広がっている。チョップド・スクリュードやループといったVaporwaveにおける王道な手法が用いられた曲もあり、地球規模の癒しの要素とクラシックなVaporwaveを行き来して不思議な感覚になれる作品。





ということで相当絞りましたが枚数考えず挙げ続けたら計27作品も。特に順位を付けたつもりもなく思いついた順。まだあるけどこの辺で。こうして並べてみると、あまりジャンルにとらわれず聴こうとしても似た傾向の作品を聴いてしまうものですね。総じてブラックミュージックっぽい割と踊れるセレクトになってました。ロックをはじめHR/HM関係もめっきり弱くなってしまった。

ちなみに曲単位だとフィロソフィーのダンスの「バッド・パラダイム」とか谷本早也歌さんの「PALPITO」とかよく聴きました。


こういうの書いておくと自分の記憶にも残りやすいことが分かったのでまた定期的に細々やっていこうかと思います。






2017年5月12日金曜日

気になる音楽メモ 3月・4月編


Especiaの解散とか春のおかげとか、いろいろと理由付けてサボった3月もまとめて気ままに振り返りながら3月・4月の新譜をああだこうだ言うやつです。




Shobaleader one / 『Elektrac』







Squarepusher率いる覆面バンド、Shobaleader oneのデビューアルバム『Elektrac』。
ざっくり言うと、発表済みのSquarepusherの楽曲を生音で再現するバンド。Shobaleader oneとしてのライブテイクをそのまま1stアルバムとしており、歓声や拍手もそのまま収録された臨場感と迫力が伝わるアルバムだ。
硬質でエッジの効いたエレクトロが中心だけど、生音メインのジャズ・フュージョンなアルバムを発表したこともあるSquarepusher。このアルバムではそんな過去の楽曲群をオシャレなフュージョン寄りの音にアレンジしたかと思えば、速弾きベース、ドカスカ叩き散らす人力ドラムンベースなどテクニカルな演奏で突然畳み掛けるようにハードな展開になることも。あえて音楽ジャンルで例えるならハードフュージョン…とでも言おうか。バンドサウンドに馴染みがあるなら、特にSquarepusherの原曲を知らない人も問題なく楽しめるアルバムではないかと。むしろ原曲という先入観がない分純粋にアルバムを楽しめるかも。
ちなみに上でデビュー作とは書いたものの、ベースのSquarepusherをはじめ腕の立つプレイヤーが集うバカテク精鋭集団とのことなので演奏はピカイチ。もしひとつ物申すとすればジャケがダサい。それ以外は最高。







Tuxedo / 『TuxedoⅡ』






Mayer HawthorneとJake OneによるユニットTuxedo、2枚目のアルバム『TuxedoⅡ』。
”お?Tuxedoってこんなアゲてく感じでしたっけ?悪くないけど。むしろいいけど?”というのが一聴してみた感想だった。
前作同様70~80年代のディスコ・エレクトロファンク感はそのままに、軽快で陽気なフロア対応型アルバムといった感じ。前作のモダンでダンディな作風から考えると大分砕けた印象を受けた。先行公開されてた「Fax with the tax」なんかは顕著で、ハンドクラップやシンガロングができそうなポイントが分かりやすく仕込んである。しかしフロア対応型とはいえそこはTuxedo、品が損なわれない程度に盛り上がるポイントを押さえたちょうどいい曲が多いかな、と。パーティにはおあつらえ向きのディスコファンクアルバム。







電気グルーヴ / 『TROPICAL LOVE』


電気グルーヴ アルバム「TROPICAL LOVE」

 

電気グルーヴ13枚目のアルバム『TROPICAL LOVE』。
諸々説明不要な感じだけど、ふざけたことしかしてないのにキッチリかっこいい電グル節。全体的に南国の解放感みたいなものを感じるのはタイトルに引っ張られているからなのだろうか。いつもよりゆるい気がする。トラックリストには表示がないのだけどKenKen、夏木マリ、トミタ栞など参加でゲスト陣も豪華。
「人間大統領」MVがAC部が描く映像を実写化したみたいな出来でヤバい。画質の荒さも。こういうことをどメジャーでやって受け入れられてるところもやっぱり凄い。






女王蜂 / 『Q』




2年ぶりに発表された女王蜂5枚目のアルバム『Q』。
妖艶、繊細でいて攻撃的、国籍性別一切不明という独特の存在感を放つ女王蜂の新譜。前作『奇麗』は重めの病んでる系歌詞にキャッチーな4つ打ちロック歌謡といった感じだったが、今回はそれまでの作風も踏襲しつつより軽快でダンサブルな方向性に舵を切った。実際先行公開された「DANCE DANCE DANCE」をはじめ、”DANCE”や”踊り”というワードが要所要所で登場している。
アルバム序盤では独特の毒っ気や妖しさは薄まったような気がしたものの、終盤では「Q」を初めとしたアルバムのダークサイドを担う病み曲が並ぶので従来の女王蜂らしさも決して消えてはいない。全9曲というアルバムにしてはコンパクトな内容でありながらそれを感じさせない濃厚な38分間。満腹。






Soulwax / 『From Deewee』




ベルギーのダンスロックバンドSoulWax、12年ぶりのアルバム『From Deewee』。
2 Many DJsの人たちが元々やってたバンド。ぶっちゃけDJとしての活動しか知らかなったので久しぶりのアルバムと言われてもピンとこなかったのだけど、ジャケに惹かれて聴いてみたとても良かった。制作期間激短の一発録りらしい。
アルバムは全体的に緩急が少なく淡々としていて、ストイックなエレクトロニカのようなペースで進む。歌モノよりインストが多く、曲ごとにバンドと打ち込みの要素の配分は変わるものの、「Missing Wires」、「Is It Always Binary」などドラムが目立つ曲が多い。ダンスロックというよりバンド×エレクトロニカという感じ。
全編BPMは100~120前後と、大よそ同じペースで曲間を空けず地続きで進む為、どこで次の曲に突入しているのか分からなくなる程シームレス。気付くとアルバム2周目に突入していることもしばしば。程よく乗れていつ聴いても邪魔にならないテンションなので日常の様々なシーンにフィットするアルバムだと思う。






谷本早也歌 / 『箱の中の少女』




谷本早也歌、初のオリジナルミニアルバム『箱の中の少女』。
…と、書いては見たものの、この人のことを全く知らなかったので諸々調べるところからはじめてみた。2015年に1stアルバム『まほうのおんがく』でCDデビュー。作詞・作曲・編曲、ボーカルまでほぼ全てをこなすDTM女子とのこと。前作は8bitなピコピコサウンドだったらしい。
このアルバムはというと、ジャケットから受ける印象通りガーリーで可愛らしい作風。カラフルで時々コミカルな8bit感も随所に見られる暖かいエレクトロポップ。NHKみんなのうたで流れてきても違和感ないであろう、童謡に出てくる優しい少女のような表題曲「箱の中の少女」をはじめとした歌モノから、上に貼った「PALPITO」のようなで神秘的でクリア質感のインストまで丁寧に作られているな、という印象を受けた。暖かみのあるピコピコサウンドとキュートで無垢な歌声に終始なごみっぱなしの25分間。










中小企業 / 『NESS』


2人組のヒップホップユニット、中小企業の2枚目のアルバム『NESS』。
この人たちの事をよく知らないのだけど、ドープで浮遊感あるトラックに、ラッパー特有の押しとクセの強さもありながら程よくゆるいフローのラップが耳心地良い。ふわふわチルい。元ネタが全く分からないけどサンプリングが多用されている。個人的にアートワークも好み(オフィシャルサイトもカラフルで洒落てる)。10曲入って1200円ですってよ奥さん。破格かよ~




中田裕二 / 『thickness』


全くノーマークだったんですけどラジオから流れてきた「Deeper」が良さげだったのでアルバムを。
古めかしさも感じるロック・AOR・ファンク・ソウル・シティポップ・カントリーなど様々なジャンルを貪欲に織り込んだオルタナティブなアルバムだった。椿屋四重奏時代から艶っぽいと評されていたボーカルも健在で、先にも出てきたリード曲「Deeper」はムーディなサックスと艶やかなボーカルが絡む煙たいファンク~ソウル風味で、ねっとりした歌い方が特に生きている。毎曲変わる味付けで聴く者を飽きさせないギターロックアルバムです。




以上、3月・4月よく聴いたもの・気になる新譜でした。
 

2017年4月9日日曜日

Especia SPICE Tour -Viva Final- に行ってきた


3/26、ついに迎えてしまったEspeciaラストライブ。現体制では最大キャパとなる新宿BLAZEにて。
桜が咲いてもおかしくないこの時期に息が白くなるほどの寒さ、そして降りしきる雨。思えば去年南堀江ビレボアでの卒業公演も、卒業を発表した新木場でのツアーファイナルも極寒でライブ後は雪が降っていた。ぺシスト・ペシスタによる涙雨再び。

解散発表後のライブでは何故か定番となっていた開演前のSMAPを聴くのもこれが最後。「Let it be」や「Battery」なんかが流れていた。最後は必ず「オレンジ」で終わる新旧織り交ぜたプレイリスト。暗転と共にバンドメンバーがステージに現れると、とうとうラストライブの幕が開いた。




セットリスト

 1. Intro(GUSTO)
 2. アビス 悠香
 3. No1 Sweeper 悠香
 4. ナイトライダー 絵莉加
 5. Danger 悠香
 6. オレンジ・ファストレーン 絵莉加
 7. アバンチュールは銀色に 悠香
MC
 8. Saga 悠香
 9. West Philly 悠香
10. Affair Mia
11. Nothing 悠香
12. 雨のパーラー 悠香
13. Sunshower 絵莉加
14. Mistake 悠香
15. 海辺のサティ 悠香
16. FOOLISH 絵莉加
MC
17. Ternary 悠香
18. YA・ME・TE! 絵莉加・悠香・Mia

アンコール
19. Aviator 絵莉加
20. Boogie Aroma Mia
21. きらめきシーサイド 悠香

ダブルアンコール(バンドなし)
MC
22. くるかな 悠香
23. ミッドナイトConfusion (Pureness Waterman Edit) 絵莉加
24. No1 Sweeper  絵莉加
25. No1 Sweeper Mia
26. No1 Sweeper extended 悠香

エンドロール




味園のボリュームを上回る曲数、ライブでの定番曲や各アルバムからバランスの良い選曲で計26曲。悠香ちゃんだけに偏り過ぎないメインボーカルで、バンドでもオケでも、Especiaの活動の歴史を総括したような内容でした。ただベストアルバム『WIZARD』に収録されていた新曲をほぼ披露せずに終わってしまったことが悔やまれる。

暗転後に登場したバンドの面々が最初に奏でるのはアルバム『GUSTO』の「Intro」。この曲をはじめに今後聴く曲が全て最後だとは不思議と思えず、いつもと同じようにライブははじまった。
メンバーは登場と共にステージの中央で向かい合う。アカペラのフォーメ―ションだ。と、悟った次の瞬間ではじまったのは現体制で披露されることがなかった「アビス」のCメロ。息遣いも聞こえそうな静かな空間で重なる3人の声だけ聞こえる空間。ステージにセットされたヤシの木も一役買い、「アビス」の世界観のような美しさを感じた。
一呼吸おいてバンドの演奏がはじまる。1章から多分本人たちの思い入れも、人気も高く、5人の印象が強いこの曲をラストライブでやっと現体制ver.で更新してくれた。いろんな意味を持ちすぎてしまっていたこの曲を最初に持ってきたことで良い意味で重くない状態で楽しめたぺシストも多かったのではないかな。ぺシストによるイントロのシンガロングも最後で、久しぶりで、懐かしくて、個々の思いが絡み合った大合唱。ライブをはじめとしたEspeciaの記憶が走馬灯のように蘇り私はここで早くも泣いた。できることならこのまま青の狭間で溺れていたい。


ここからMCまでは「No1 Sweeper」、「ナイトライダー」「アバンチュールは銀色に」、「Danger」と、シングルべストのような楽曲が踊る。最初にここまで出し切って大丈夫か心配になるくらいの飛ばしっぷり。そんな熱狂の渦の中で一服の清涼剤だったのが「オレンジ・ファストレーン」。『AMARGA』からは唯一セットリストに入ったこの曲はバンドアレンジでの披露は珍しい。落ちサビやアウトロのフェイクを歌う絵莉加ちゃんの表情はとても穏やかで、荒ぶるオタクとの対比はいつも以上のものだった。


MCに入り自己紹介をした後”今日という日を絶対忘れない日にしてみせる!サヨナラは言わない、いつもみんなに伝えたいことはGraciasという言葉です”と語りはじまった曲は「Saga」。”It's hard to say goodbye 声には出さないで”というサビの歌詞にもかかった言葉だった。「Saga」の後もコーラスワークが映える「Nothing」、「雨のパーラー」など聴かせるスロウな曲を前半に、「海辺のサティ」、「Mistake」など後半は定番曲多めで構成させたこのブロック。個人的にはバンドアレンジは多分初めてな「Sunshower」と、やはりMiaちゃんリードで原曲からテンポを落としたヒップホップビートな黒いアレンジの「Affair」がこのブロックのハイライトです。ステージ中央で熱くそして艶やかに歌い上げるするMiaちゃんと、コーラスで絡み合う悠香ちゃん絵莉加ちゃんのハーモニーは素晴らしい。2章のハイライトと言っても過言ではないかもしれない。何度聴いても痺れる。
そしてこの曲に限らずだけど、Miaちゃんは自分の歌割がないパートも口ずさみながらニコニコと笑って体を揺らしていることがよくある。ステージに立つ側が余裕をもって楽しんでいる様子は見ている側も引き込むし、メインで歌っているメンバーの邪魔をせず最大限曲に参加していく姿勢はとても推せる。

MCでは「Ternary」の英語のフレーズ大合唱の練習。英語が苦手らしい絵莉加ちゃんとMiaちゃんいわく”難しかったら感覚で…”とのこと。本編「YA・ME・TE!」はリードボーカル持ち回りで間奏ではバンドメンバーの紹介あり。大いに熱狂の渦を巻き込んだまま本編終了。メンバーはサクッと捌ける。



アンコール、「Aviator」と共にステージに戻り、「Boogie Aroma」は歌詞は英語で曲は原曲のバンドアレンジ。リードはMiaちゃん。この曲ほどリードがコロコロ変わってた曲は他にない。ラストツアーにしてサビでの腕ふりが、絵莉加ちゃんの即興で毎回動きが変わるという新たな展開を見せたこの「Boogie Aroma」。2章のライブで育った曲の1つでしょう。最後は「きらめきシーサイド」。Miaちゃんが誘導されるともなくイントロの背中でカッティングギターダンスを踊っていたことが印象深い。ヤシの木が映える南国感ある3曲でバンド演奏でのアンコールが終了。オタクのボルテージは最高潮だった。南国どころじゃない熱さ。



ダブルアンコールではツアーTシャツを着てメンバーが再び登場。
MCで3人の活動を通しての感想をひとりずつ語った後、最終的にマネージャーでありEspeciaの生みの親である清水さんに向けた清水コールが巻き起こる。PA卓にいた清水さんは遠くて見えなかったけど多分涙ぐんでいた。会場中の声援が自分に向けられ、どうにも処理しきれなかったか、清水コールが収まらない中「くるかな」のオケが流れはじめる。Especiaラストの、本当の終りのはじまりがはじまった。「くるかな」のイントロの誰かを待つ可愛らしい振り付け、「ミッドナイトConfusion (Pureness Waterman Edit)」での絵莉加ちゃんの煽りで動くフロア、会場総動員で声を合わせる”Eyes On Me!”、そして最後に待ち受けていたのは3連続「No1 Sweeper」地獄という名の天国。メンバー3人がひとりずつリードとり、コーラスのポジションも全て違う三者三様の個性が前面にでた「No1 Sweeper」を披露。最後を見届けに来たぺシスト・ペシスタ達を納得させるための置き土産のような感じに見えた。リードを取る各メンバーへのコールやケチャの激しさも一層増す。周りを見渡すと、冷静に見守るオタクもいれば、精一杯盛り上がるオタク、泣くオタク、フロアも悲喜こもごも。
最後の「No1 Sweeper」が終わると、悠香ちゃんが”これからもEspeciaの曲が皆さんの中で生き続けることを願ってます!これからもEspeciaをよろしく”と言い残し、3人はステージを後にした。


その直後再び暗転しステージ後方にスクリーンが現れ、新旧Especiaメンバーをはじめ関わったスタッフやアーティストの名前がクレジットされたエンドロールが映し出されると共に、今までのEspeciaの、おそらく全曲メドレーをスクリュードさせたVaporwaveミックスが流れはじめた。この曲が単純なスクリュードではなく少しノイズ混じりの雑々としたミックスで、全てのプログラムを終えて概念として昇華されていく音のようでとても良かった。約6分ほどあるVaporwaveなエンドロールという最後まで”らしい”演出でEspeciaラストステージが終了した。




メンバー個人の今後としては、絵莉加ちゃんはひとまず引退を明言。次にやりたい事が既にあるらしい。悠香ちゃんとMiaちゃんは今後も歌っていきたいとは語っていたものの、特になにか決まっている訳ではない様子。
そして、4月に入ってすぐメンバー3人個人でツイッターをはじめた。ラストライブから1週間もたたないうちにEspecia活動時より個人での発信が多くなるというあべこべな状況に困惑しつつも、直接コミュニケーションをとることも可能なツールで以前より身近な存在になっているような気さえする。こんなに早く戻ってくると誰が予想しただろう。今後の展開がどうなっていくか全く予想もつかない。

Especiaは実体のあるものとしての活動を終え、概念となった。もうステージ上で歌を聴くことはできないけど、悠香ちゃんが残した言葉を忘れないであろうラストライブの会場にいたぺシスト・ペシスタをはじめ、Especiaを聴く者の中で生き続けていく。ヤシの木を見れば思い出せる。ツイッターもある。この長文駄文ブログもこれから残った楽曲と共にEspecia遺伝子を絶やさない役目を微力でも担うことが出来ればと思う。しばらくは歌うことを望んだ2人のカムバックを待ちながら、事あるごとにヤシの木の絵文字を使っていこうかな。月並みな言葉ではあるけど、メンバーをはじめ関わった全員に幸あれ。