2015年7月17日金曜日

Future funk と Seapunk というマイナージャンル


今年に入って猛烈なマイブームが巻き起こっていたVaporwaveという音楽ジャンル。
Vaporwaveがよく分からない方は先にこちらを読んでいただけると嬉しいです( 心の耳で聴け: つかみどころないVaporwaveとかいうジャンル )。

で、Vaporwaveについて色々調べていくとFuture funkSeapunkというこれまた先細り過ぎてどこに向けているのかよく分からない、Vaporwaveから派生したらしい音楽ジャンルがあることが分かったので今回はそのあたりのことを書いていきます。




Future funk



Future funkはVaporwaveから派生したサブジャンル。Vaporwaveのカオティックな部分(わざとザラ付かせたローファイサウンド、変則的な展開、ピッチを極端に落として伸びきった元ネタなど、初見の人を困惑させるような要素)をある程度差し引いてダンサブルにしたような音楽で、ファンク、AOR、ディスコ、アンビエント、チルウェイヴなんかのクロスオーバー。Vaporwaveと比べると圧倒的に爽やかでオシャレなジャンルです。

Vaporwaveとの共通点は、80年代当時のブラコン・ポップス・AORなんかのジャンルの音楽をサンプリングしているコラージュ音楽だということ、曲と関係ない日本語や映像などが多用されている点などなど。素材やベースはほとんど一緒。しかしFuture FunkはVaporwaveと違いスクリュードさせず、逆にピッチを上げる。だから出来上がる曲は近いようで別物。紙一重というか味付け次第でVaporwaveともFuture funkともなりえる為、一緒くたにされがちの兄弟ジャンルです。
カッティングギターやサックスなどの生音、重低音強めの4つ打ちで踊りやすくした現代版復刻ディスコサウンド、まさしくFutureなFunkです。ネオディスコ、ヴェイパーブギー等と言われることもある模様。

最初に聴いた時は”80年代の曲(杏里とか角松敏生とか)の4つ打ちダンスミックス”みたいな印象でした。真夏のビーチを想わせるグル―ヴィな曲もあれば、きらびやかで落ち着いた都会の夜を想わせるムーディな曲(伝わるかな…)とか。普通にクラブとかで流れていても違和感無さそうなオシャレで一般受けしそうな曲多数。



例えばこんな感じ↓









Future funk系のプロデューサーで有名な2人をちょこっとご紹介。まずはSkyler Spence

2015年現在は動きが鈍いVaporwaveに対して、Future funk界隈には精力的に活動しているプロデューサーもおり、その中でもFuture funkの第一人者と言っても過言ではないのがSAINT PEPSIこと、先日法律上の問題で改名したSkyler Spence。

今でも作品をリリースし続けているFuture funk系のネットレーベル「Keats//Collective」からリリースされた「Hit Vibes」(マジで名作。無料DL可)で注目され、去年インディレーベルCarparkと契約。7インチシングルの「Fiona Coyne / Fall Harder」をリリースしました。今やToro y MoiやBeach Houseともレーベルメイトです!そしてVaporwave~Future funk出身の出世頭。自らの姿を表舞台に表し商業的姿勢に入った人も彼ぐらいなもんじゃないでしょうか。今年はアメリカでツアーも回るらしい。











続いてマクロスMACROSS 82-99

マクロスは一昔前の日本のアニメ(おそらく名前に含まれている82-99位の年代)がお好きなようです。名前の一部でもあるマクロスをはじめ、セーラームーンのキャラクターの名前をそのまま曲名に使ったり、Artzie Music(静止画や80年代っぽい昔の映像をただ延々ループさせるだけのイメージビデオを日々上げ続けるYoutubeのチャンネル)に上がる彼のビデオも、90年代アニメの一部分を使用したものがちらほら(権利的にアウトだよね)。ちなみにこのArtzie MusicにはマクロスのみならずVaporwave、Futur funk界隈のいろんな曲のビデオがあり、2015年現在も毎日のように更新され続けてます。ここもおもしろい。

そこそこ最近のマクロスの動きで気になったのをいくつか挙げると、M.I.Aのレーベル所属のラッパーRyeRyeとウィスパーボイスなKittyというラッパー(Kittyに関しては調べてみたものの詳細不明)をフィーチャーした「セーラーチーム」という曲を発表したり、つい先日発表したDJミックス「alaya radio: 028」にはなんとEspeciaの「雨のパーラー」が使われていたり(!)と日本の音楽やアニメ好きっぷりを見せつけてくれました。しかしEspeciaを見つけてくるマクロスのアンテナ感度やべ~~




















Seapunk


さて、お次はSeapunk。このSeapunkというジャンルはエレクトロニカ、チルウェイブやヒップホップなんかのクロスオーバーで、全体的に軽くて脳内麻薬出てる系のドープなクラブミュージックです。深夜に爆音で聴いたらトランス状態になりそう。個人的にはVaporwaveと近いジャンルという認識で曲聴くといまいちピンと来ないです。
ではなぜVaporwaveと並んで名前を上がるのかと言うと、どのMVにもカクカクした古臭い3Dポリゴンが使われていたり、曲に対して全く脈絡のない映像があてがわれているという点で共通しているからかと。

そしてSeapunk一番の特徴は、その名の通り映像に海やヤシの木、イルカなどの海を連想させるモチーフや映像が多く使われている点、そしてその色使いやビジュアルの奇抜さです。海っぽいという意味ではFuture funkとも遠くはないような気もするけど、音楽としてFuture funkのような爽やかさは無くディスコ・ファンク感も皆無でなんだかチャラいのでやはり別物ですね。



その奇抜で前衛的なビジュアルは、MVやジャケットに留まらず2013年頃のシーンが盛り上がっていた時代にはファッションカルチャーとしても注目されていたみたいです。むしろちょっと調べた感じだと音楽的側面よりファッションカルチャーとして取り上げられている事の方が多いような印象でした。寒色系の髪色、目を引く色柄モノやパンチの効いたアイテムを取り入れた、Seapunkを体現したようなファッションです。Azealia Banksの「Atlantis」のMVがどう考えてもSeapunkを意識してるので、お前の文章力じゃSeapunk感伝わらねえよって方はMV見てみてください。


Seapunkの代表的なアーティストは、Ultrademonというアーティストがそこそこ名が通っているらしく、『Seapunk』という直球なタイトルのアルバムを2013年に出しています。Seapunkについては個人的にあまり惹かれなかったので掘り下げるのはこれくらいにしておきますが、興味あったらまたSoundcloudあたりで漁ってみるとそれっぽいのがいくつかヒットします。関係ないですがSeapunkなファッションが好きな人はgalaxxxyの服とか好きそう。


Yr So Wet 3.0 - Ultrademon + Dj Kiff - "Bubbles" SPLASH008

ATLANTIS - AZEALIA BANKS (**OFFICIAL VIDEO**)




ということで、枝が分かれに分かれた先にあった2つの先細りジャンルに関してのもろもろでした。

大きく捉えると全部一緒にされるんでしょうね。結局のところ同じジャンルでもいろんな傾向の曲があってはっきりしたジャンルの境界線を引くのは難しいので、大きくとらえてこんな感じの傾向がある程度に思ってください。Future funkは音楽として成立している感あってオリジナルであの曲調の曲を作ったら普通に売れそう。(誰かの曲をサンプリングしなかった時点でFuture funkとは言わないんですかね?)


BandcampのFuturfunkタグを探ってアルバム単位で聴いてみるも良し、
Soundcloudでお気に入りのプロデューサーを見つけるも良し、
Youtubeで映像から入るも良し。


って感じでいろいろ入口はあるので、気に入ったのを落として色々聴いてみると楽しいです。個人的にはYoutubeのチャンネル Artzie Music で曲にあてがわれる映像のチョイスが好きです。ついでに使われている曲のプロデューサーのSoundcloud、BandcampやらのURLが必ず貼ってあるので至れり尽くせり。

ちなみに、Bandcampの”Free Download”はもちろん無料。”name your price”も投げ銭方式なので無料で持っていくのも可。VaporwaveにもFuture funkにも言えることですが、この辺のジャンルは無料だったものが予告もなしに突然有料になったり、そもそも落とせなくなったりと不安定なので気に入った作品はその場で落としておくことをお勧めします
Skyler Spenceでちらっと名前を出したネットレーベル「Keats//Collective」も以前は多くの音源がフリーダウンロードできたのすが、最近確認したらほとんどが有料になってました。まあ有料と言っても大した額ではないので、気に入ったのは素直にお金払って落としてあげてください。