2018年3月14日水曜日

2017年よく聴いたアルバム


長いこと更新もせずとっくに年も越しましたが気が向いたのでやってみました。
あまり一貫性もなくただ音楽をふらふらと聴き続けている私が去年よく聴いた作品群。




■Soulwax / From Deewee





Soulwaxが12年ぶりに突然リリースしたアルバム『From Deewee』。
エレクトロニックでいてバンドサウンド、ボーカルが主張し過ぎずインストもあり、アゲ過ぎでもサゲ過ぎでもない。全て中庸なところを押さえていて、聴く時の気分によって聴こえ方感じ方が違う摩訶不思議なアルバム。アルバムのテンションとしては淡々としているのだけど、どんな気分で聴いても何となくちょうどいい塩梅に耳になじんでくれるのでいつのまにか”迷ったらコレ”な心の寄りどころ的存在に。曲間無しなのでシームレスにヌルっと聴けるアルバム。






■N.E.R.D / NO ONE EVER REALLY DIES



年末リリースで7年ぶりにドロップされたN.E.R.Dの新作が滑り込み。
変則的で全体的に間が抜けたような印象は”らしさ”が強く出ていると思う。でもサビには分かりやすいフック仕込んであってキャッチー。そんなバランスが心地よくてついつい手が伸びた。変態だけでは片づけ切れないファレル・ネプチューンズ節。客演の多さよ。#1~7くらいまでは飽きずにまだ聴いてる。






■RHYMESTER / ダンサブル




RHYMESTER、11枚目のアルバム『ダンサブル』。
タイトルが示す通り、難しいこと抜きに踊ろうぜ!というアルバム。近年は毎回違うコンセプトをもとにアルバム制作をするライムスターの作品の中では比較的直球で快楽主義的な部分が強く出ていて分かりやすい作品だと思う。飲んでウェイウェイ言って揺れていれば確実に楽しくなれる。フロア向き。あとジャケが最高。ポップもブギーも生音もあり、エモもあれば爽やかもおふざけもあり。全部踊れて楽しい。彩り豊かな10曲入魂40分間のダンサブルタイム。
去年はこのアルバムが出てから急ピッチでライムスターにずぶずぶとハマっていったので個人的にライムスター元年とさせていただきます。






■藤井隆 / light showers




”90年代の音楽”をテーマに作られた、オリジナルとしては4枚目のアルバム。
ベースはポップであれ、今回はギターロック調、ハウス、シティポップ、NJSと90年代の要素が各曲にちりばめられている。プロデュース / アレンジはYTこと冨田謙さん。アルバム発売を前に公開された90年代CM風アルバムトレイラ―も今のファン層や芸人の枠を超えて話題に。ちなみにジャンパーは当たらなかった。
もうかれこれ5年近く、主に歌手・藤井隆としては何度もライブに足を運んでいるので、もはや客観視はできていないかもしれない。しかし藤井さんは贔屓目抜きでリリース毎に最高を更新してくれる。貴重な存在です。芸人はもとより俳優としての顔も併せ持つ多彩な方だけど、歌手としてのポテンシャルも計り知れない。






■Thundercat / DRUNK



Thundercat、4枚目のアルバム『DRUNK』。
AOR、エレクトロニカ、シンセポップ、ヒップホップなど様々なジャンルのクロスオーバー。Thundercatフィルターを通した進化系ブラックミュージックに。
見た目からは似ても似つかぬ繊細で高音メロウなボーカル、ファルセットの美しさも相まって甘い優しい印象なんだけど、時々本職?のバカテクベースプレイでビシビシ切り込んでくるメリハリ職人。このバランスが心地よい。アルバム全体的には物憂げでマイナー調。
24曲収録というと重たく感じ無くもないけど1曲3分くらいで進むのでテンポが良い。何年か前に出たFlying Lotusのアルバムもやたら回転が早かったような。BRAINFEEDERイズムかな。







■LEO今井 / Film Scum EP

Film Scum


正直、私はLEO今井についてMETAFIVEの人ということ以外何も知らない。でもこのEPはよく聴いた。テレ東で深夜に放送されていた「デッドストック」というドラマのサントラも兼ねたEP。リンクを開いてもらえば分かると思うけど今時珍しいホラーでオカルティックな内容のドラマで、そのドラマの空気感を聴覚で操っていた曲がこのEPに収録されている。
1~4は劇中のBGMとして使用されていた曲。内省的で陰鬱とした感情や衝動が渦巻くダークなインスト。どれもノイジーでエレクトロニック。中でも「Dead Stock4」は初見で確実に面食らう。ノスタルジックな曲調から一転、最後の約40秒で突然訪れるスラッシュメタル。牙をむくようなシャウト。唖然としながら痺れる謎の感覚。ダメな人はダメだと思うけど転調…というか、意表を突かれるプログレッシブな展開が好きな人にはドラッグです。
そんな不穏なインスト群が終了すると、最後5曲目はバンドサウンドでLEO今井ボーカルの新曲「On videotape」。最後に人の声やバンドの生音に触れることで正気に戻ってくれたような感覚になって少し安心できる。この情緒不安定な流れも面白かった。

5曲合わせても15分程度で聴けてしまうし、ドラマを知らなくても楽しめるのでお試し感覚で聴いてほしい作品です。






■AKLO×JAY'ED / Sorry...come back later EP




ラッパーAKLOとシンガーJAY'EDのスプリットEP『Sorry...come back later』。
夏頃のリリースということもあってか、ボーカルもラップもスムースでR&Bっぽいグルーヴの曲が並ぶ。アルバムトータルではクールな印象。プロデューサーはBACHLOGIC。
アートワークは大瀧 詠一の『A LONG VACATION』のジャケでもおなじみのイラストレーター永井博。90年代前半オマージュのMVも◎。
ちなみにリードで発表されていた「Different Man」はLEO今井の時にも出てきたデッドストックのオープニングでもある。あのドラマの音楽担当とは趣味が合うっぽい。






■The PLAYlist / Cahsing Goosebumps

CHASING GOOSEBUMPS [Analog]


DJ Jazzy Jeff & the Fresh Princeとしてお馴染みのJazzy Jeffによるプロジェクト、The PLAYlistのアルバム『Cahsing Goosebumps』。
若手を中心とした新たな才能と、Jazzy Jeff周りのベテランプロデューサーやシンガーがお互いのインスピレーションを持ち寄り、新たな音楽を作り出すことを目的としたPlaylist Retreatという2015年にはじまったプロジェクトが発展した結果、今回のアルバムリリースに至った。
メインボーカルにはソウルシンガーとしても既にキャリアがあるGlenn Lewisを迎えて1週間でレコーディング。ソウル・ジャズ・ヒップホップを中心としたミディアム~スロウな作風。
去年2月のリリースだけど年末に発見して以来今も聴き続けている作品。1度聴いてから今までリピートし続けているので早い段階で出会っていてもおそらく聴き続けていたはず。ということで年間ベスト入り。何を隠そうDJ JINレコメンド(アーティスト・DJが選ぶ2017年ベストディスク)。こんなところにもライムスター余波が。








■Visible Cloaks / Reassemblage

Reassemblage [ボーナストラック1曲のダウンロード・コードつき]



ポーランドの2人組Visible Cloaksのアルバム『Reassemblage』。
音のない自然の営みを音として具現化したような、繊細なスピリチュアルアンビエント・ニューエイジ。ふわふわと耳触り柔らかな丸みを帯びたシンセ、エキゾチックな楽器の音やパキパキとエッヂの立った電子音が混ざる瑞々しい世界。粒立った音像。
甲田益也子がフィーチャーされた「Valve」は唯一”人の声”が収録されており、スポークンワードと連動するように柔らかいシンセが重なる独特な世界観の曲(声とトラックが連動する感じはASA-CHANG&巡礼を思い出した)。そういったフックとなる曲もある。
作業用BGMというと少し雑な感じに聞こえがちだけど、いつ聴いても邪魔にならず気分や気持ちを落ち着かせてくれるので、何かしながら延々流していた。サイケな映像も良い。





■Shobaleader One / Elektrac




Shobaleader Oneのデビューアルバム『Elektrac』。
Squarepusherの過去の名曲をバンドアレンジで再現。ベースはもちろんSquarepusher。スタジオレコーディングではなくライブテイクをそのまま収録しているので、実質ライブ盤。基本エレクトロニックな曲をバンドで再現しているので、結果的にやたら音数が多くて攻めたフュージョンになっている。原曲よりスピーディで時々歓声も入る生感が私にはたまらなかった。去年ソニックマニアでライブも見たのだけど音圧と勢いに圧倒された。ライブテイクをそのまま収録したのもステージングへの自信の表れかもしれない。






■Tycho / Epock




Tychoの5thアルバム『Epock』。前2作から続く3部作が本作にて完結。新たにメンバーが正式加入し、ソロからバンド編成になったことでエレクトロニックなポストロックバンドに。
タイトで跳ねるような小気味よいドラム、ゆらめくように残響するシンセ、主張しすぎないギター、ベース。BPM130前後とほとんど一定で、楽器隊各パート見せ場があり、緩急ある展開で踊らせてもくれるというバンドと打ち込みの良いとこどり。一挙両得。”夜明け”や”芽吹き”とかそんな印象を受けるアルバム。






■Kamasi Washington / Harmony of Difference


ジャズサックス奏者・Kamasi Washingtonの2ndアルバム『Harmony of Difference』。
”Hermony of Differene”というタイトルで示された対位法という音楽的手法、異なる旋律の調和がテーマ。アルバム通して組曲として構成されており、本作の3分の1くらいの尺を占める最後の「Truth」で壮大なグランドフィナーレを迎える。キャッチー、スリリング、ムーディなど、各曲の色が出ていておもしろかった。
3枚組で3時間弱というフルボリュームどころじゃないボリュームでリリースされたデビューアルバム『The Epic』は、正直なところ長すぎて最後まで聴ききるにも一苦労だったけど、本作6曲入り30分とかなりタイトにまとまっているのでサクッと聴けてちょうどいい良い。起承転結がハッキリしていてアルバムの全体像を捉えるまで時間がかからなかった。初心者からジャズファンまで幅広い層からの支持もうなずける軽くて濃厚なアルバム。







■MISIA / MISIA SOUL JAZZ SESSION

MISIA SOUL JAZZ SESSION

MISIAのセルフカバーアルバム『MISIA SOUL JAZZ SESSION』。
MISIAが時々垣間見せるブラックな側面に焦点を当てた作品。誰もが耳にしたことがあるであろう自身の楽曲がよりソウルフルにアップデードされている。
元々ソウルフルで安定した歌唱力を持ったディーバタイプなシンガーであることはおそらく周知の事実だろうけど、楽曲面ではそこまでブラックミュージックに寄りすぎずポップベースな曲が多い印象だった。しかし本作は曲においてもそのブラック濃度グンと上げて私のようなブラックミュージック寄りの音が好きな人間を殺しに来た。ジャケなんかももう黒人の出で立ちですし。
ゲストにもトランペッター黒田卓也、ギタリストRaul Midón、ベーシストMarcus Millerと、その筋の名プレーヤーを招く力の入れよう。
特別MISIAのファンではないけど、バンドでスムースなソウル、ジャズ風味なアルバムはボーカルの持ち味ともがっちりハマっていてとても気持ちよかった。






■Vektroid / Seed & Synthetic Earth




かつてはMacintosh plus、情報デスクVIRTUALなど数々の変名を使いVaporwaveというジャンルを確立させるきっかかけを作った鬼才Vektroidの最新作。ここに来て満を持してのネット音楽枠です。最近は変名作品もあれど、Vektroid名義を中心にエレクトロニカやノイズ、エクスペリメンタルなんかがメインの音楽家として活動中。近年Vaporwave色は影を潜めている。
そんなVektorid最新作はポップでエモーショナルでカオティック。入り乱れる電子音とグルーヴの波に揉まれながら『Seed & Synthetic Earth』の世界を疾走するアトラクションのような。各曲表情豊かでゲームのサントラのようでもある。Vektroidの中では曲ごとに明確な風景が見えているのかもしれない。それくらい各曲の表情とその世界感がくっきりと打ち出された作品。アルバム1周で満腹になれる。できれば通して聴きたい。






■Nick Hakim / Green Twins





Nick Hakimの1stアルバム『Green Twins』。
スローでサイケデリックなLo-fiソウル。アンニュイな高音ボーカルとモヤのかかったように広がるトラックが絡む酩酊感が心地よい。聴くほどに脱力。哀愁漂うサックスパートが挟まれる「Miss Chew」なんかは鼓膜がトロトロ溶けていきそう。ブルージーなギターやもたげるように刻むドラムなど、気だるそうなバンド演奏も◎。





■Tuxedo / TuxedoⅡ


Tuxedoの2ndアルバム『TuxedoⅡ』。
ディスコ・ブギーな作風は相変わらずなのだけど、ダンディでややメロウな前作から肩の力が抜けて、シンガロングありクラップありの陽気なフロア仕様に。軽やかで少し若返ったような印象の2作目。前作同様ディスコ・ブギー・ファンクといった要素に弱い私は何の抵抗もなく聴き続けられた1枚だった。
個々で既に成功を収めている2人なのでいつまで活動していくのか疑問を持ち始めていけど、先月Zappとのコラボソング「Shy」の7”シングルがリリースされた。まだまだディスコ・ブギーで行けるっぽい。






■!!! / Shake The Shudder

Shake The Shudder [輸入盤CD / デジパック仕様 / ブックレット付き] (WARPCD283)_444



!!!の7thアルバム『Shake The Shudder』。
元々エレクトロニックでダンサブルなバンドで、根っこの部分は変わらないけど前作までの!!!がハッピーで陽気だとしたら、本作はクールでスカした印象のアルバム。どの曲も派手さはあまりないものの、淡々と踊らせてくれる。楽器隊はベケベケしていてファンキーなベースプレイが光る曲が多い。ファンクトロニカ感。
幕開け1曲目「The One 2」は聴いてびっくりソウルフル。でいてエレクトロニック。誰だか分からないけどほとんどのパートがソウルフルな女性ボーカル(たぶん黒人)の歌唱。この1曲目のソウルフルさんとは別に、8や10にも名もなき女性ボーカル(たぶん白人)が登場する。







■the band apart / Memories to Go


the band apartの8thアルバム『Memories to go』。
ロックをベースに曲ごとに様々なジャンルの影響も感じられるのがバンアパらしさでもあると思うのだけど、本作は特にそういったアプローチが仕込んである。
爽やかなポップスからAOR、80年代シティポップ、時々HRHMを感じるフレーズまであり、耳触りはシンプルだけど実は複雑。でもトータルで散漫な印象にならない一本筋が通ったバランス感覚。7月のリリースを意識してか清涼感もありノスタルジックで、「雨上がりのミラージュ」や「お祭りの夜」などタイトルからも夏を感じる曲もある。

爽やかでメロディアスなギターリフや軽快なカッティングギターも良いのだけど、爽やか一辺倒で終わらない遊び心が随所にみられるので気が抜けない。特に曲終盤突然の転調から攻めのギターとドッスドスのツーバスで攻め散らかして終わる「Super high」や、イントロからアクセル全開で駆け出してアウトロではテンポダウンして終わる「BOOSTER」なんかは聴いてて脈が上がっちゃう。個人的に近年のバンアパは確実に当てに来るので間違いない。







■テンテンコ / Good Night Dub


テンテンコの自主制作CDRシリーズ第18弾『Good Night Dub』。
毎月1枚違うテーマでリリースされているテンテンコさんのCDR。テーマはダブ。ゴリゴリのノイズやIDMなどストイックなインストや、鼻にかかった声が印象的な歌モノが多いテンテンの新境地。
本作は全編インストでノンボーカル。ダブらしいエコーやリバーブでぐわんぐわん揺れるようなグルーヴの曲が並ぶ。湿度の高いぼんやりした夏の真夜中のような作品。酩酊感も◎。最後の「Bikibiki Dub」はテンテンらしいノイジーでシンセライクな攻め曲。







■テンテンコ / Deep & Moistures 1


テンテンコの自主制作CDRシリーズ第23弾『 Deep & Moistures 1』。こちらもインスト。
テクノ・ハウス・ベースミュージックなんかの影響を受けた、高速BPM・重低音連打が特徴のジャンル、JUKEがテーマ。少し間の抜けた音をサンプリング。抜きどころとキレのバランスがいい塩梅。テンテン流のJUKE。







■tricot / 3




日本のロックバンド、tricotの3rdアルバム『3』。
力強い芯のあるボーカル、女性らしいコーラスの繊細さに、変拍子と転調を繰り返すテクニカルで武骨な演奏の合わせ技。キャッチーなメロもふんだんに、でも歌詞は皮肉っぽくてやや影があって…と、tricotワールド炸裂。じゃなくて爆裂。”唯一無二”という言葉がしっくり来るバンドです。アッパーが多くて飛ばした印象のアルバム。特に「18,19」は聴いてるこっちの目が回るほど転調が多くてやりたい放題。ライブで聴きたい。







■MULATU ASTATKE / Mulatu of Ethiopia

MULATU OF ETHIOPIA [帯・ボーナストラックDLコード・日本語解説付国内仕様盤]


MULATU ASTATKEのアルバム『Mulatu of Ethiopia』。
ヴィブラフォンやコンガの奏者でエチオピアジャズの創始者。レジェンド的存在。72年の作品なので厳密に言うと2017ではないけど、リイシューしたしよく聴いたので2017としておきます。
ジャンルはジャズ、ファンク、ラテンのクロスオーバー…というと少し物足りなくて、同じアフリカでもレゲエとは違う南国エチオピアで育まれた民族音楽独特のエキゾチックさと、まったりとしたリズムが終始良い湯加減のインストジャズ。レアグルーヴ。
ドラムやベースよりヴィブラフォンを初めとした上モノの存在感が強く、中でも気になったのが何やら呪術的な儀式に使われそうなピロピロした尺八のような笛の音色。これは尺八でもフルートでもなくワシントという竹製の笛の音らしい。エチオジャズには欠かせない楽器のひとつとのこと。勉強になる。参考→(【音楽】エチオ・ジャズの歴史とその魅力







■Diskette Romances / Diskette Romances





ここからはネット音楽枠。台湾のビートメイカーDiskette Romancesのアルバム『Diskette Romances』。
サンプリング・ループ系のアンビエント~ニューエイジ。最近はVaporwaveと言ってもいろんな方向性があるけど、これは奇をてらうような演出がある作品ではなく、#Riversideというタグがうなづける優雅なアンビエント。ザラッとした音質のLo-fiさが良い意味で雑味として生きていてそれも◎。あとジャケットのインパクト。年間ベストジャケのひとつです。






■バーチャル Paragon ™ / World Leaders




フランスのビートメイカー、バーチャル Paragon ™ のアルバム『World Leaders』。
こちらもワンフレーズのループ系。やたら小奇麗でスタイリッシュな印象のアンビエント。講習の時とかに見せられる映像で薄く流れてそうな公共感。ラスト2曲だけ少し様子がおかしい。特に最後の「2020  The  Fall」は深いリバーブがかかったLo-fiな音色に急激なピッチの上下運動を繰り返す、Vaporwaveの中でもクラシックなタイプの曲。ジャケットや曲名から察するに政治的なメッセージを込められているのかもしれない。最後ひずんだ2曲でシニカルなメッセージが込められている…と捉えるのは深読みしすぎかな。






■ΣPSON / CASCADIA






アメリカのビートメイカーΣPSONの『CASCADIA』。
Vaporwaveの中で更に無数に存在するマイクロジャンルのひとつ、late night lo-fi系の作品。ムーディなスムースジャズやAORのスクリュードでよりスロウになったリズムと、歪みというより倍速録音したカセットのようなこもった音質、リバーブ・エコーがかかった酩酊感など、文字通りlate nightでlo-fiな聴き心地。本作はA面で、『ARCADIA』というB面も存在する。どちらも同じくlate night lo-fiたる作風。個人的には本作の方がテンポが遅い曲が多く、夜感が強くて再生頻度も多かった。






■FM Skyline / Deluxe Memory Suite™






アメリカのビートメイカー、FM Skylineのアルバム『Deluxe Memory Suite™』。
チルアウトで南国のユートピア感が強いリゾートアンビエント…かな。時々lo-fiな音色の曲も混じっていて私好みだった。とにかく無心で再生できて邪魔にならない。






LifeMod / Virtual Skies Ⅱ





LifeModの『Virtual Skies Ⅱ』。
ヒーリングミュージック・ニューエイジ寄り。アフリカのサバンナを思わせるような野性味溢れるナショナルジオグラフィック的世界が広がっている。チョップド・スクリュードやループといったVaporwaveにおける王道な手法が用いられた曲もあり、地球規模の癒しの要素とクラシックなVaporwaveを行き来して不思議な感覚になれる作品。





ということで相当絞りましたが枚数考えず挙げ続けたら計27作品も。特に順位を付けたつもりもなく思いついた順で。こうして並べてみると、あまりジャンルにとらわれず聴こうとしても似た傾向の作品を聴いてしまうものですね。総じてブラックミュージックっぽい割と踊れるセレクトになってました。ロックをはじめHR/HM関係もめっきり弱くなってしまった。

ちなみに曲単位だとフィロソフィーのダンスの「バッド・パラダイム」とか谷本早也歌さんの「PALPITO」とかよく聴きました。


こういうの書いておくと自分の記憶にも残りやすいことが分かったのでまた定期的に細々やっていこうかと思います。






2016年8月9日火曜日

歌手・中谷美紀の素晴らしさについて



女優・中谷美紀が女優の傍ら歌っていた時代があることを知っている人はどれくだいいるのだろう。年代的にアラサー前後くらいまでは記憶に残っているのかな。


かつては桜っ子クラブ、KEY WEST CLUBというグループでアイドル活動をしていた時期もあることは案外知られていない事実(桜っ子クラブには菅野美穂もいたらしい)。
そんなグループでのアイドル活動を経て、女優業の傍ら坂本龍一のプロデュース(!!)のもとソロ名義で再度歌手デビューを果たし、20歳から約5年ほど歌手と女優二足のわらじを履いていた時期があったが、そんな時期も今は昔、もう20年近く前の話。
当時から歌手としての活動は緩やかだったようだけど、ベストアルバム『MIKI』を2001年にリリースしたのを最後に15年以上歌手としての目立った活動はなく、最近の彼女からは歌う印象すらない。

しかしソロ活動期間の作品は非常に良質で、よくある若手女優の歌手活動のようなアイドル然とした作品とは一線を画すアーティスティックな作品を数枚リリースしており、制作に携わっていたアーティストも坂本隆一をはじめ、大貫妙子、小西康陽、高野寛、売野雅勇、などなど、クレジットだけでもよだれモノの豪華な面子による強力なバックアップ。
私自身彼女の歌手活動を知ったのは今から大体5年くらい前。何がきっかけだか覚えてないけど気づけばレンタルしてむさぼるように聴いていたのがアルバム『食物連鎖』と『Cure』。完全なる後追いで発売当時のことなど何も分からないけど、そんなことどうでも良くなるくらいセンセーショナルな出会いでした。




さて、前置きはここまで。

今回は中谷美紀名義で出したオリジナルアルバム3枚リミックス盤1枚計4枚の曲について、シングルカットされた曲は散々言及されているので、アルバム曲を中心にレビュー…というには薄っぺらい文章を適当に書いていこうと思います。歌詞についても触れたい部分は山ほどあるけどめちゃめちゃ長くなるので今回は音像・音色やアルバムの情報、小ネタなどと感想を交えて書きます。気になったら曲のタイトルでググってください。大体どの曲の歌詞も出てくるでしょう。










◆食物連鎖





  1.MIND CIRCUS
  2.STRANGE PARADISE(Pradise Mix)
  3.逢いびきの森で
  4.汚れた脚 The Silence of innocence
  5.my best of love
  6.WHERE THE RIVER FLOWS
  7.TATTO
  8.色彩の中へ
  9.LUNER FEVER
10.sorriso escuro



坂本隆一プロデュースの元、1996年に満を持してリリースされた1stアルバム
坂本隆一の他にも大貫妙子、小西康陽、果てはアート・リンゼイまでアルバムに関わっているとなれば当時の音楽好きは黙ってない。シングルは「Mind Circus」と「Strange Paradise」の2曲。原曲とさほど違いがないリミックスで収録。作詞は売野雅勇が中心。3枚出したアルバムの中で1番ポップで明るいアルバム。

90年代らしいJ-POPをベースに、テクノ時々ジャズ、ボサノバなど異ジャンルの匂いが混ざりつつ、当時20歳前後の若手女優のアルバムにしてはだいぶ落ち着いた仕上がり。ボーカルは中谷美紀独特のミステリアスな雰囲気がこの時すでに備わっているものの、どこか幼さが漂う真っすぐな歌い方。なんというか無垢。

年相応のフレッシュさが感じられるシングルの「Mind Circus」と「Strange Paradise」の2曲はやはりアルバム通してもインパクトが強く、特に「Mind Circus」のようなド頭から耳を持ってかれるようなキャッチーさのある曲は歌手・中谷美紀の活動においてこの曲以降出てきません笑 デビュー時がピークの明るさです。他にアルバム中でも異彩を放っているのが小西康晴作詞・作曲の「逢いびきの森で」。中島美嘉の「Love Addict」のようなアシッドジャズ風味(「Love Addict」のような官能的な妖しさはないけど)。


そして歌詞。売野雅勇の意味深で耽美な詞も歌手・中谷美紀の肝。一歩間違えると中二病みたいな歌詞も中谷美紀はしっかり自分のものにしていて、ミステリアスで危うい独特の世界観における重要な役割を果たしている。あと「TATOO」の作詞は本作唯一中谷美紀によるものです。彼女も売野雅勇に負けず劣らず意味深な歌詞を書くよね。 (褒)











◆Cure




Disc1

  1.いばらの冠 [Album version]
  2.天国より野蛮
  3.砂の果実
  4.水族館の夜
  5.鳥籠の宇宙
  6.Superstar
  7.キノフロニカ
  8.corpo e alma

Disc2

  1.Aromascape
  2.Aromascape - no piano mix



中谷美紀の意思も盛り込んで作られたらしい1997年リリースの2ndアルバム。2枚組。
作詞は本作も売野雅勇中心で「鳥籠の宇宙」のみ中谷美紀の作詞。シングルは「いばらの冠」「天国より野蛮」「砂の果実」の3曲。ちなみに、本作には元スカパラのドラムで今は亡き青木達之のクレジットがあります。生音が使われている数曲に参加していたようです。

で、このジャケット。真っ黒。CDを手に取ってみると帯に当たる位置に中谷美紀が映っているんだけど帯を取ると真っ黒。つまり何が言いたいかというと中身も暗い。1stが1番明るいと先にも書きましたが、1stの明るいポップな部分をそぎ落とした、全体的にダウナーで陰があるアルバム。
ボーカルも前作からほぼ1年しか経っていないのに前作のような幼さはなくなり、落ち着いた抑揚が美しい大人のボーカルへと進化たような印象を受ける。本作ではどこか冷めたようなさらっとした歌い方をしている。坂本隆一指示の元、作品に合った歌い方をしていたのかもしれない。

Disc1は普通にフルアルバム。本編という捉え方でいいと思う。松本隆作詞の優しく美しい詞が映える「水族館の夜」は珍しく打ち込みの音が見たらないバンドサウンド。暗いを通り越して陰鬱としていて重々しい「Superstar」は原曲の雰囲気をぶっ壊したカーペンターズのカバー。ノイズがかったボーカルがけだるさ不穏さに拍車をかけてドン底まで堕ちたような気分に。
”暗くてドラマティックな乗れるハウス”(だと私は思ってる)という一見相反する要素が共存している「キノフロニカ」は、中では踊れるドンシャリしたBPM早めのハウスポップ。アルバム最後の「Corpo e alma」は大貫妙子作詞の浮遊感あるサンバ調。アルバム唯一明るいとも言えるこの曲も、詞とボーカル独特の儚さで底抜けに明るくないところがとても”らしい”。この曲があるおかげで最後に少しだけ気持ちが晴れる。

暗い、陰がある。でも時々垣間見える優しさと最後に見せるほんの少しの明るさ。長い長いトンネルを抜けたような感覚。ダークサイド中谷美紀とても良い。



Disc2はよく眠れそうな癒しのアンビエント「Aromascape」と「Aromascape-No Piano Mix」を収録。30分超えの大作で、当たり前ながら2曲ともボーカル無し。確かな情報ではないけど、このDisc2自体が中谷美紀発案によるもので、テーマは”癒し”なのだとか。実質ボーナスディスクかと思っていたけど作品としてのコアはこちらにあるのかもしれない。全編ダウナーな調子のDisc1で気が滅入ったらDisc2を聴けということなのだろうか。

ちなみに、多分この「Aromascape」というタイトルにちなんで、アルバム発売当時”オリジナルブレンドエッセンシャルオイル「release」&アロマランプを抽選でプレゼント”なんていう特典施策をしていたらしい。洒落てるな~~











◆私生活





  1.フロンティア  [Album Version]
  2.雨だれ
  3.temptation
  4.Confession
  5.クロニック・ラヴ [Remix Version]
  6.Spontaneous
  7.夏に恋する女たち
  8.Automatic Writing
  9.フェティシュ(Fetish) [Folk Mix]
10.Leave me alone...
11.promise
12.all this time
13.temptation [Drum Mix]



坂本隆一と共にワーナーへ移籍し、前作から約2年ぶりの1999年にリリースされた3rdアルバム
カバーアルバムというコンセプトでのリリースだったという話も散見されるものの、現代では定かな情報は確認できず。カバーというより原曲から大きく姿を変えたリメイクが多く、そこにオリジナルも混じっている感じです。いずれもリミックスで収録のシングル曲は「フロンティア」と「クロニック・ラブ」。本作は作曲に坂本隆一以外に半野喜弘と竹村延和も参加。リメイク曲以外の作詞はほとんど中谷美紀。


エレクトロニカ・アンビエント色が強く出た本作。少し不気味なほど無機質でぬくもりを感じない、でも美しいアルバム。例えるなら、窓のない真っ白な部屋で私生活を演じなさいとでも言われたような、生活感が全くない私生活。潔癖な空間に幽閉されてるような感覚。
些細な衝撃で消えてなくなりそうな繊細で透明感あふれるボーカルがとても美しい。(かつて中田ヤスタカがPerfumeに指示したように)できるだけ感情を込めずに歌えという指示でもあったかのような、そんな印象。また前作とは違う歌い方。曲がボーカルを強調するように作られているのか、息遣いもしっかりと拾うような調整がされているのか、専門的なことは私にはよく分からないが、前作よりボーカルが近くに感じる。



収録曲はアルバムミックスでの収録もあるとはいえ、ほとんどがアルバム発売当時発表済の曲。ほぼ1曲毎に挟まれるスキット的なインスト4曲を除くと本人歌唱の新曲は3曲のみで、その全てが、教授フィルタを通り原曲からだいぶ姿を変えたリメイク曲。非常に説明し辛いのだけど、メロディラインだけは一緒で歌詞も曲のアレンジも原曲とは程遠い曲もあるので、カバーでもなければオリジナルでもない…その間を行くリメイク曲が多数収録されているアルバムというのが一番近い気がする。

ピアノが絶妙に不穏さを彩る「Temptation」、本作に合った無機質なアレンジではあるものの心地よい浮遊感と、本作唯一人間らしさが垣間見える歌詞でホッとできる「夏に恋する女たち」は大貫妙子のカバー(前作までしかり、大貫妙子が関わる曲はアルバムのオアシスのような存在かも)。
神秘的で涼しげな「Promise」は、当時坂本隆一がパーソナリティを務めていたラジオ番組のコーナーで選ばれた優秀作品を曲にしたものらしい。全編英語の歌詞が結構デレてて直球でらしくないけど不思議と浮かない教授マジック。「フロンティア」の英語バージョン「all this time」は、打ち込みのドラムを省き原曲に用いられたアコギがメインで展開されるアコースティックなアレンジに。

その他「Confession」、「Automatic Writing」は半野喜弘作曲、「Spontaneous」、「Leave me alone...」は竹村延和の作曲で、この4曲は中谷美紀のセリフ練習や生活音をコラージュした曲。
ここで『私生活』というアルバムタイトルが生きてくるんですね。このコラージュした4曲がとても実験的。無機質で機械的。”生活音”をもってしても生活感が微塵も感じらず冷たい印象ばかりが後味として残るのが味わい深いところ。聴いていてヒリヒリするような、生活の1部が切り取られている感じもこのアルバムらしい。このインスト群が本作の冷たさ無機質の演出の肝だと思う。



アルバム全体的に、無機質さから来る得体のしれない背筋がゾクッとする危うさみたいなものが漂っていて、初めて聴いた時はその何とも言い難い不穏な雰囲気が苦手だったのだけど、聴きこむうちにいつしか怖さが薄れ(慣れ?)、優しさや美しさを感じるまでになるから不思議なものです。聴くほどに取り込まれるような感覚。個人的には前作『Cure』よりも癒しの要素が強い作品。
しかし、インストがアルバムの3分の1を占めるので、新しい歌唱曲が本当に少ない。この雰囲気でもう少し歌唱の新曲多めでアルバムを1枚作ってほしかった。













◆Vague





  1.天国より野蛮  [DJ KRUSH mix]
  2.いばらの冠  [Buffalo Daughter mix]
  3.Superstar  [Andrea Parker mix]
  4.キノフロニカ  [333DDT mix]
  5.corpo e alma  [Snooze mix]
  6.天国より野蛮  [X-STATIC mix]
  7.Aromascape  [DJ CAM RAINFOREST mix]
  8.砂の果実  [larmes ameres]




1997年に発売された2ndアルバム『Cure』のリミックス盤
『Cure』の2か月後くらいに発売された作品で、今度は真っ白なジャケ。おそらく中谷美紀本人は制作にほぼ関わっていないであろう作品だけど、DJ KRUSH、Buffalo Daughter、DJ Camなど、名だたるアーティストたちによるリミックス。どういう経緯でこの人選に至ったのかをうかがいたいところ。教授パワーかな。


曲ごとにいろんなジャンルのアーティストたちによる味付けが加り、ガラッと印象が変わった曲ばかりだけど、その傾向が顕著なのが「キノフロニカ [333DDT mix]」。いつ歌いはじめるのかと思っていたら歌なしのインストだった。たぶんキノフロニカですって言われないと最後まで気付かないであろう完全に別の曲。
天国より野蛮 [DJ KRUSH mix]」なんかはもうヒップホップですし。太いビートがズンズンくるDJ KRUSHっぽいミックスです。「いばらの冠 [Buffalo Daughter mix]」は終始不吉な雰囲気で、曲の展開も、ボーカルを全く無視した曲作りが逆に清々しい。「Superstar [Andrea Parker mix]」は、ボーカルのリバーブを深めにかけ、テケテケした電子音が耳に残るテクノっぽいミックスに。

原曲のサンバ感をより強調し野性味あふれるミックスとなった 「corpo e alma r[Snooze mix]」は曲後半突然の転調が挟まれ、アコギ主体で展開されるボサノヴァ風?のゆったりぼんやりした蜃気楼みたいなパートが印象的。そして意図してか偶然か、サンバ感を継承するが如く続くのは「天国より野蛮 [X-STATIC mix]」。「corpo e alma [Snooze mix]」が陽なら、この曲は陰。原曲の雰囲気を踏襲しつつ乗れるハウス・テクノ+少しサンバのリズム。

癒しのアンビエントだった原曲の匂いを残しつつ、ヒップホップ・ジャズ要素を入れた「Aromascape [DJ CAM RAINFOREST mix]」は、原曲に無かったサックスがメインで渋カッコいい。”RAINFOREST mix”というタイトル通り、アフリカあたりの熱帯雨林の夜を思わせるようなミックス。1曲9分と長いけど原曲よりは長くない。
原曲の生音を一切排除して打ち込みで構成される「砂の果実 [larmes ameres]」は、不穏な空気感が漂いながら、Aメロのシャキシャキしたドラムンベースが小気味よいミックスに。



要するにこのリミックス盤めちゃくちゃ聴きごたえあるんです。最高。ネット上では本作に関しての情報も評判もほぼ見当たらないのが不思議なくらい。

しかし、曲とボーカル個々では良くても2つ合わせるとかみ合っていなかったり、曲と歌で個性を相殺しているようなミックスもあって、そこを良さととるかどうかで好き嫌いが分かれそうな作品でもあります。原曲や中谷美紀、坂本隆一に思い入れがない人の方が純粋に楽しめるかもしれないです。CD発売と同時期にLPも出ているようなので音楽好きの層に向けた作品なのかも。




以上CD4枚分。ここまでたどり着いた方ありがとうございます。


残念ながら2016年現在上記のアルバムは『食物連鎖』以外は廃盤ですが、現状どのアルバムもアマゾンなりブックオフなりでディグれば割と簡単に見つかります。中古だとめちゃめちゃ安く手に入る。申し訳なくなるほど安い。
あとベストを含めて『私生活』以外のアルバムがサブスクで配信されてたりもします。(AppleMusicとSpotifyは確認済)なぜ『私生活』だけ配信がないのかは謎ですが、先にも書いたように活動中にレーベルを移籍してる関係で権利関係上色々と難しいのでしょう。

ちなみにシングルにもアルバム未収録の曲も多々あり、これもおそらくアマゾンかなんかに頼れば手に入るでしょう。初期に出したシングルは懐かしの8センチシングルでのリリースです。








そんなわけで、中谷美紀と坂本隆一と売野雅勇の個性が個性を引立てあってて最高のポップスじゃない?って話でした。
中谷美紀の透明感ある歌声と坂本隆一のテクノ仕込みのポップ、そこに売野雅勇の耽美で意味深な歌詞が乗ることで出来上がる絶妙なバランスの世界観。お試しあれ。





2015年8月14日金曜日

佐井好子 ワンマンLIVEに行ってきた


私の個人的な想いが強すぎてなかなか投稿できず、下書きに残したままにしようかとも考えたのですが、「佐井好子」の検索ワードでここまでたどり着いている方もいらっしゃるようなので、今さらではありますが3か月前のライブの話を…もう3か月も経ってしまったのか…。


**************************************************************************************************************************


5/29に行われた佐井好子36年ぶりのワンマンLIVEに行ってきました。
場所は渋谷O-nest。ついに来た、という感じです。36年ぶりで小さいnestを着席にしていた事もありこの日のチケットは完売。オークションでも高騰していたみたいです。

物販でCDやポストカードの販売をしているのが目に入りました。よくよく見てみると、この日限定の未発表音源集?2種類が特典で付く上に終演後にサイン会(!!!)が行われるとのこと。マジすか…事前に発表あったかな…?把握していなかったので慌てて既発のアルバム「万華鏡」、「密航」と「青いガラス玉」の3枚を購入。サイン会に関しては後述にて。


エレベーターを出てすぐ、7thFloorのエントランスにて

物販にて撮影。ちょっと光で飛んでしまったな…



しばらくして会場であるnestに入場。
nestで着席、しかも自由席というなかなかないシチュエーションゆえポジショニングには迷ったものの1段上がった見晴らしのいい場所を確保。

客層もやはりちょっと異質で、好子さんが活動していた70年代当時のファンと見られる高めの年齢層が半分以上を占め、残りは後追いの若年層かな(と言っても20代以上で30~40代が中心と思われる)、といった印象でした。なるほど、着席の意味をここで理解。
活動当時のファンと思われる方達は元々知り合いの方も多い様子で、会場内で「久しぶり~~」といった声がちらほら上がっていてちょっとした同窓会のようでした。70年代ライブハウスに通っていたであろう方たちにも今と同じようにライブで出会って交流を深めていたのかな~~と思うと、なんだか勝手に感慨深い気持ちになりました。



今回のバンドはほとんど前回のステージ(真夜中のヘビィロックパーティ)と変わらずのメンツです。しかし今回はバンドにサックスとフルートで参加の小埜涼子さんを加え、更に原曲の音に近いものをライブで見ることができました。もちろん前回に引き続きJOJO広重さんがノイズギターで数曲参加。
セットリストは「真夜中のへヴィロックパーティ」のロングセットのような流れでした。前回やった曲は★マークがついてます。今回は曲数でいうと倍程度の曲をやったことになりますね。ライブは2部制。間に衣装替えとJOJOさんのMCを挟みました。



バンド


guiter : HIOSHI (奇形児)
base : FUJIWARA (ex.サバートブレイズ)、
keyboard : HAJIMETAL (ex.ミドリ)
drams : 岡野太 (非常階段)
sax, flute : 小埜涼子

noise g : JOJO広重




セットリスト


1部

  1. 遍路  ★
  2. ひら ひら
  3. 耳のない仔猫 
 4. あの青い空には神様がすんでいる (JOJO広重)
  5. 春の川 (JOJO広重) ★
  6. 夜の窓

2部

  7. 冬の地下道
  8. 蝶のすむ部屋 ★
  9. 春の夢
 10. 人のいない島 ★
 11. 変わり者 ★
 12. 白い鳥 ★

アンコール

 13. 日本一小さな村(新曲!)







1部


時間と共に席は満席に。後ろにスタンディングゾーンに人が増えてきたところでて定刻を過ぎ、いよいよ暗転。36年ぶりのワンマンがはじまりました。

楽器隊と共に現れた好子さんは今回もイスに腰掛けて歌います。座っての歌唱でものびやかです。芯はしっかりしつつ、その場の空気を揺さぶるように響く歌声。前回もそうでしたが、好子さんが歌いはじめると場の空気が一変するんです。刺激的かつ幻想的な歌詞、曲の”昭和の日本の闇”を思わせる独特の暗さも相まって、ピンと研ぎ澄まされるような空気に様変わり。曲と歌声以外物音ひとつしない静寂な空間。場の空気を支配するように引き込まれるんです。
遍路」からスタート。前回の1曲目もこの「遍路」でした。哀愁漂う美しいこの曲でゆったりとはじまるライブ。私は前回遅れて入った為、ほとんどこの曲を聴けなかったのですが、今回このワンマンライブという好子さんの世界感を堪能する上で最高の環境でじっくりと聴くことができたので、この曲と共に前回の悔しさもどこかにほどけて行きました…。



あの青い空には神様がすんでいる」と「春の川」はノイズギターでJOJOさん登場。
前者は後半からノイズが入り、曲後半の出番が来るまでステージで黙って待機。スロウで薄暗くジャジーなこの曲に、心の内に秘めた激しい感情のごとく響き渡る鮮烈な轟音。ミスマッチかと思いきやこの曲にぴったりでした。曲に合わせてかき鳴らすような激しいものではなく、忍び寄るようにじわじわと音数が増えていきました。
そして高めの年齢層にはちょっと刺激が強かったのか轟音に驚く人も散見されました…(そんな私もあまり慣れないものでちょっと耳の負担が心配になりましたが…)。好子さん自身は"ノイズギターの音は結構好き"とのこと。2、3曲やってはMCを挟む形式でライブは進み、1部が終わり小休止。



1部と2部の間は5、6分暗転したままで、好子さんの衣装チェンジ兼JOJOさんのMCがありました。今回ライブを催す運びとなった経緯のお話やJOJOさん自身のアーティスト佐井好子への想いなどのお話。JOJOさんは70年代当時に好子さんのライブは見られなかった事を相当悔しがってました。「山崎ハコのライブは見てるのになんで好子さんのライブは見てないんだ!」と。その悔しさから今回のワンマンに繋がってるようです。そんな話を挟み第2部へと展開していくのですが、その前にMCの事も少し。

曲間に数回挟んだMCでは、真夜中のへヴィロックパーティの時にはしなかったお話も色々と聞けて興味深かったのでいくつか。
アルバム『胎児の夢』というタイトルには由来があり、夢野久作や江戸川乱歩、橘外男、久生十蘭等、独特の世界観を持った小説が好きだった好子さんは、夢野久作の「ドグラ・マグラ」に出てくる論文(と言っていたと思います…)に大変感銘を受けたそうです。その論文のタイトルこそ『胎児の夢』で、そのままタイトルにしたとか。
「冬の地下道」の地下道は存在する!なんていう話も。今はあるか分からないとのことですが、奈良の大和西大寺という駅の近くにある地下道だそうです。

あとはシルクロード関係のお話。好子さんは以前からシルクロードに興味があり、出身地奈良がシルクロード東の終着点であり、好子さんのアルバム全てに一貫したテーマもシルクロードなのだとか。佐井という苗字もシルクロードに関係があるのではないかと考えているそうです。長くなりそうなので詳しくは書きませんが、シルクロードの都市で知られるサマルカンドを訪問した際に何故か拾ったたまごっちのお話とか…笑 MCは意外と笑いどころも多く、佐井さんのお人柄に触れるようなお話も聞くことができた貴重な機会でした。






第2部

さて、第2部1曲目、「冬の地下道」。好子さんの”わっ!”という声からはじまる原曲通りに始まったこの曲…。好子さんが”わっ!”と言った時の含んだように少し恥ずかしげにはにかんだ表情が忘れられません。その瞬間この曲が今から生で聴けるんだと把握し動悸が止まりませんでした。手をグッと握りしめながら気づいたら真顔で泣いてました…。ライブで聴ける日が来るなんて…!変なアレンジはせず、真っ直ぐ歌う声、、、ただただ呆然としているうちに終わってしまいました…。またいつか聞ける日は来るのでしょうか。

その後の「春の夢」と「変わり者」では小埜さんのサックスとフルートが冴えわたってました。特に「変わり者」後半のサックスパートはなかなか荒ぶったアレンジというか、原曲よりも激しいうねるような、音数も多い演奏でかっこよかったです。前回の「変わり者」はサックスではなくJOJOさんがノイズギターで入っていて、ノイズもまた違うアレンジで良かったのですが、やはりサックスを聴くとこちらがしっくりきます。そして「変わり者」を歌っている好子さんはいつもリズミカルに体を揺らして楽しそうでした。


最後の曲はこれも前回同様「白い鳥」。”70年代最後の曲”として紹介した後、やはり楽器はキーボードと好子さんのみのシンプルな構成で。シンプルが故、音の一つ一つのくっきりしていてダイレクトに涙腺を刺激してきます…。目が離せなくなります。いろいろライブ見てきましたが瞬きの回数が少なくなるほど目が離せなくなるのはこの曲くらいです。





アンコール

本編最後の曲の前のMCでは”もしアンコールをするような事になるのであれば…”と、控えめに新曲を用意している事を予告。全員はけるともちろん間髪入れずにアンコールがおこり、焦らすことなくに再びステージに戻ってきた好子さんは新曲「日本一小さな村」を披露。複雑な展開は見せず、好子さんのギターを主軸にしたシンプルな展開(だったと思う)。しかし歌詞は壮大な世界観の曲でした。

最後の最後はバンドメンバー全員前に出て横並びであいさつ。(ツアーファイナルとかによくあるあの光景です)。久方ぶりのワンマンライブの成功や再び表舞台に立ってくれた嬉しさなど、観客演者双方からにじみ出るの暖かなムードに包まれながら穏やかに終了しました。







で、終演後はサイン会…。

突然のサイン会に何も言葉を用意してきていなかった私はとにかく緊張していました。緊張してハイになったついでにCDを買い足し未発表音源2種類を確保しつつサインを2枚ともいただくことに!こんな展開になるなんて…幸せ。周りを見渡すと、以前から所有していたであろう詩集やLP持参でサイン会に参加している方も見受けられました。

実際好子さんご本人と少しですが言葉を交わしてみましたが、意外と気取らず接してくれるチャーミングな方という印象でした。今まで出したアルバムを聴いて、近寄りがたい雰囲気の気難しそうな人という勝手な佐井良子像を作っていたので、普通ににこやかにお話を聞いてくれる状況が少し不思議でもあり嬉しくもあり…といういろんな感情が交じり合っ高揚してました笑 そういえばMCで70年代当時の好子さんは”頭でっかちで友達にしたくないタイプだったかも”と自身を振り返っていたような。そして目の前で見るととても小さくて華奢!

サイン会では緊張しすぎて何をお話ししたか忘れてしまいましたが…好きですまたライブやってください位の事は言えたような…握手もしていただきました…!


サインを頂いた2枚・・・・!

未発表音源集2枚


未発表音源は「きらきら」「ひとよ酒」「日傘をさしたら」の曲収録。全て1976年ごろ収録。好子さんが活動していた当時のデモテープをCD化したもので、必ずテープのスイッチを押す音と好子さんの声でタイトルを言ってからはじまります。アコギで引き語るデモ音源集?です。「きらきら」は好子さん独特の暗さはあまり感じさせないマイナーコードで切なげなフォークソング、3分28秒。「ひとよ酒」はライブ盤収録のものと同じ曲、2分29秒。「日が傘をさしたら」はリズミカルで跳ねるようなギターが印象的な好子さんにしては攻めた印象の曲、1分46秒。個人的には「きらきら」がお気に入りです。

未発表ライブ音源は京都山一ホールで行われたライブ音源。収録曲は「紅い花」「密航」の2曲。





今回1stアルバム『万華鏡』からの曲は「冬の地下道」しかセットリスト入りしなかったのが少し残念でしたが、「冬の地下道」は1stアルバムの中でも大好きな曲なので贅沢言えませんね…。個人的には「二十才になれば」や2ndアルバム収録の「天使のように」4thアルバム収録の「母さまへ」等々…聴きたい曲を挙げはじめたらキリがないです。
特に聴いてみたいのは3rdアルバムの「胎児の夢」(曲)なのですが、今回のMCで「大野雄二さんのアレンジが壮大すぎてライブでは出来ない」とハッキリ言われてしまいました 笑 複雑な展開の長編曲ですからなかなか難しいのでしょう。

今回も好子さんは”ライブあまり好きではない”とは言いつつ、ライブを楽しんでいるように見えました。”特別な時間になりました。”とも。新曲を披露など、次回を予感させる発展的な内容であったこともとても嬉しいです。
新曲「日本一小さな村」はJOJOさんもCD化できるように頑張るとツイッターでつぶやいていたので、次に何か動きがあるとしたらCD化の時なのかな?と思っていますが当分はなにもなさそうですね。

去年の真夜中のヘヴィロックパーティもそうですが、2001年のJOJOさんのシングルへの参加以降、今に至るまでの好子さんの活動はJOJOさんが居なければ実現していなかったでしょう。特に表舞台へ出るライブ活動に関してはJOJOさんの尽力がなければ確実に実現していないはずです。”ライブがあまり好きな方ではなかった”と言っていた好子さんがステージに立っただけでも奇跡だと思っていたのが、ワンマンライブまで…本当に感謝です。



次に好子さんがステージに立つ時も立ち会えるといいな…。いつになるか分からないその日を私は待っています。




2015年7月17日金曜日

Future funk と Seapunk というマイナージャンル


今年に入って猛烈なマイブームが巻き起こっていたVaporwaveという音楽ジャンル。
Vaporwaveがよく分からない方は先にこちらを読んでいただけると嬉しいです( 心の耳で聴け: つかみどころないVaporwaveとかいうジャンル )。

で、Vaporwaveについて色々調べていくとFuture funkSeapunkというこれまた先細り過ぎてどこに向けているのかよく分からない、Vaporwaveから派生したらしい音楽ジャンルがあることが分かったので今回はそのあたりのことを書いていきます。




Future funk



Future funkはVaporwaveから派生したサブジャンル。Vaporwaveのカオティックな部分(わざとザラ付かせたローファイサウンド、変則的な展開、ピッチを極端に落として伸びきった元ネタなど、初見の人を困惑させるような要素)をある程度差し引いてダンサブルにしたような音楽で、ファンク、AOR、ディスコ、アンビエント、チルウェイヴなんかのクロスオーバー。Vaporwaveと比べると圧倒的に爽やかでオシャレなジャンルです。

Vaporwaveとの共通点は、80年代当時のブラコン・ポップス・AORなんかのジャンルの音楽をサンプリングしているコラージュ音楽だということ、曲と関係ない日本語や映像などが多用されている点などなど。素材やベースはほとんど一緒。しかしFuture FunkはVaporwaveと違いスクリュードさせず、逆にピッチを上げる。だから出来上がる曲は近いようで別物。紙一重というか味付け次第でVaporwaveともFuture funkともなりえる為、一緒くたにされがちの兄弟ジャンルです。
カッティングギターやサックスなどの生音、重低音強めの4つ打ちで踊りやすくした現代版復刻ディスコサウンド、まさしくFutureなFunkです。ネオディスコ、ヴェイパーブギー等と言われることもある模様。

最初に聴いた時は”80年代の曲(杏里とか角松敏生とか)の4つ打ちダンスミックス”みたいな印象でした。真夏のビーチを想わせるグル―ヴィな曲もあれば、きらびやかで落ち着いた都会の夜を想わせるムーディな曲(伝わるかな…)とか。普通にクラブとかで流れていても違和感無さそうなオシャレで一般受けしそうな曲多数。



例えばこんな感じ↓









Future funk系のプロデューサーで有名な2人をちょこっとご紹介。まずはSkyler Spence

2015年現在は動きが鈍いVaporwaveに対して、Future funk界隈には精力的に活動しているプロデューサーもおり、その中でもFuture funkの第一人者と言っても過言ではないのがSAINT PEPSIこと、先日法律上の問題で改名したSkyler Spence。

今でも作品をリリースし続けているFuture funk系のネットレーベル「Keats//Collective」からリリースされた「Hit Vibes」(マジで名作。無料DL可)で注目され、去年インディレーベルCarparkと契約。7インチシングルの「Fiona Coyne / Fall Harder」をリリースしました。今やToro y MoiやBeach Houseともレーベルメイトです!そしてVaporwave~Future funk出身の出世頭。自らの姿を表舞台に表し商業的姿勢に入った人も彼ぐらいなもんじゃないでしょうか。今年はアメリカでツアーも回るらしい。











続いてマクロスMACROSS 82-99

マクロスは一昔前の日本のアニメ(おそらく名前に含まれている82-99位の年代)がお好きなようです。名前の一部でもあるマクロスをはじめ、セーラームーンのキャラクターの名前をそのまま曲名に使ったり、Artzie Music(静止画や80年代っぽい昔の映像をただ延々ループさせるだけのイメージビデオを日々上げ続けるYoutubeのチャンネル)に上がる彼のビデオも、90年代アニメの一部分を使用したものがちらほら(権利的にアウトだよね)。ちなみにこのArtzie MusicにはマクロスのみならずVaporwave、Futur funk界隈のいろんな曲のビデオがあり、2015年現在も毎日のように更新され続けてます。ここもおもしろい。

そこそこ最近のマクロスの動きで気になったのをいくつか挙げると、M.I.Aのレーベル所属のラッパーRyeRyeとウィスパーボイスなKittyというラッパー(Kittyに関しては調べてみたものの詳細不明)をフィーチャーした「セーラーチーム」という曲を発表したり、つい先日発表したDJミックス「alaya radio: 028」にはなんとEspeciaの「雨のパーラー」が使われていたり(!)と日本の音楽やアニメ好きっぷりを見せつけてくれました。しかしEspeciaを見つけてくるマクロスのアンテナ感度やべ~~




















Seapunk


さて、お次はSeapunk。このSeapunkというジャンルはエレクトロニカ、チルウェイブやヒップホップなんかのクロスオーバーで、全体的に軽くて脳内麻薬出てる系のドープなクラブミュージックです。深夜に爆音で聴いたらトランス状態になりそう。個人的にはVaporwaveと近いジャンルという認識で曲聴くといまいちピンと来ないです。
ではなぜVaporwaveと並んで名前を上がるのかと言うと、どのMVにもカクカクした古臭い3Dポリゴンが使われていたり、曲に対して全く脈絡のない映像があてがわれているという点で共通しているからかと。

そしてSeapunk一番の特徴は、その名の通り映像に海やヤシの木、イルカなどの海を連想させるモチーフや映像が多く使われている点、そしてその色使いやビジュアルの奇抜さです。海っぽいという意味ではFuture funkとも遠くはないような気もするけど、音楽としてFuture funkのような爽やかさは無くディスコ・ファンク感も皆無でなんだかチャラいのでやはり別物ですね。



その奇抜で前衛的なビジュアルは、MVやジャケットに留まらず2013年頃のシーンが盛り上がっていた時代にはファッションカルチャーとしても注目されていたみたいです。むしろちょっと調べた感じだと音楽的側面よりファッションカルチャーとして取り上げられている事の方が多いような印象でした。寒色系の髪色、目を引く色柄モノやパンチの効いたアイテムを取り入れた、Seapunkを体現したようなファッションです。Azealia Banksの「Atlantis」のMVがどう考えてもSeapunkを意識してるので、お前の文章力じゃSeapunk感伝わらねえよって方はMV見てみてください。


Seapunkの代表的なアーティストは、Ultrademonというアーティストがそこそこ名が通っているらしく、『Seapunk』という直球なタイトルのアルバムを2013年に出しています。Seapunkについては個人的にあまり惹かれなかったので掘り下げるのはこれくらいにしておきますが、興味あったらまたSoundcloudあたりで漁ってみるとそれっぽいのがいくつかヒットします。関係ないですがSeapunkなファッションが好きな人はgalaxxxyの服とか好きそう。


Yr So Wet 3.0 - Ultrademon + Dj Kiff - "Bubbles" SPLASH008

ATLANTIS - AZEALIA BANKS (**OFFICIAL VIDEO**)




ということで、枝が分かれに分かれた先にあった2つの先細りジャンルに関してのもろもろでした。

大きく捉えると全部一緒にされるんでしょうね。結局のところ同じジャンルでもいろんな傾向の曲があってはっきりしたジャンルの境界線を引くのは難しいので、大きくとらえてこんな感じの傾向がある程度に思ってください。Future funkは音楽として成立している感あってオリジナルであの曲調の曲を作ったら普通に売れそう。(誰かの曲をサンプリングしなかった時点でFuture funkとは言わないんですかね?)


BandcampのFuturfunkタグを探ってアルバム単位で聴いてみるも良し、
Soundcloudでお気に入りのプロデューサーを見つけるも良し、
Youtubeで映像から入るも良し。


って感じでいろいろ入口はあるので、気に入ったのを落として色々聴いてみると楽しいです。個人的にはYoutubeのチャンネル Artzie Music で曲にあてがわれる映像のチョイスが好きです。ついでに使われている曲のプロデューサーのSoundcloud、BandcampやらのURLが必ず貼ってあるので至れり尽くせり。

ちなみに、Bandcampの”Free Download”はもちろん無料。”name your price”も投げ銭方式なので無料で持っていくのも可。VaporwaveにもFuture funkにも言えることですが、この辺のジャンルは無料だったものが予告もなしに突然有料になったり、そもそも落とせなくなったりと不安定なので気に入った作品はその場で落としておくことをお勧めします
Skyler Spenceでちらっと名前を出したネットレーベル「Keats//Collective」も以前は多くの音源がフリーダウンロードできたのすが、最近確認したらほとんどが有料になってました。まあ有料と言っても大した額ではないので、気に入ったのは素直にお金払って落としてあげてください。





2014年11月22日土曜日

つかみどころがないVaporwaveとかいうジャンル


2020.3.12 更新


ヴェイパーウェイヴという不思議な音楽ジャンルの原型が誕生してから今年で11年になるそうです。

未だに”ヴェイパーウェイヴ”で検索してここにたどり着く人もいるようなので、改めて補足します。この投稿は私がヴェイパーウェイヴというジャンルを認識した2014年当時の、主に音楽にフォーカスした内容で、多少誤解も含んだあくまで素人のまとめです。

このページまでたどり着く人には言うまでもないと思いますが、2020年現在ヴェイパーウェイヴという言葉自体が認知が広がり、ヴェイパーウェイヴ以降の音楽・文化も発展。ヴィジュアル的側面だけにフォーカスした潮流なんかも散見され、ヴェイパーウェイヴという言葉が示す範囲自体が広がっていると思います。
一般的にニッチな文化であることに変わりはないですが、参考資料がほとんどない状況からは脱し、ネットで簡単に情報が手に入るくらいにはなってきました。(今思えば注目してた人はいたと思うけど2014年当時の私は「日本で4人ぐらいしか聴いてないんじゃね」と思ってました。それくらい日本語の資料がほとんど見当たらなかった。)

今は当時とは比べものにならないほどネット上の情報も豊富で、正確かつ詳細な情報も検索上位にヒットします。昨年発売されたヴェイパーウェイヴディスクガイド『新蒸気波要点ガイド』(私は関わってませんが、日本初のヴェイパーウェイヴ関連書籍です。とても参考になりました。)をご参照ください。

以下ヴェイパーウェイヴを知った時の衝撃と興味だけを原動力にかき集めた、2014年時点での知見です。加筆修正はしてません。当時の感じそのままで。



*****************************************************************************************




今から大体3年くらい前に降って湧いたように現れた謎ばかりの音楽ジャンル「Vaporwave」。
今回はこのVaporwaveについてああでもないこうでもない話を少し。個人的に今更ピークが来ているジャンルです。意識して探したり聴いたりしているのもここ数ヶ月なもので、とりわけ詳しいわけではないです。素人なりに調べながら書いてみます。あしからず。



さて、興味があってもその正体がイマイチつかめないこのジャンル。
まず特徴・傾向をいくつか挙げます。

  1. 80年代後半くらいの曲をサンプリングして再構築した曲
  2. 80年代後半くらいの画質の粗い映像を適当につなぎ合わせたMV(っぽい映像)
  3. 音楽ジャンルでいうとディスコ、フュージョン、アンビエント、チルウェイブとかそのあたり
  4. なぜか蔓延する日本の言葉、映像、音楽
  5. 曲、映像から曲名やプロデューサー名など使われる言葉は支離滅裂で意味を持たない
  6. 表立って活動している人がほぼいない



てな感じで、作品に寄りけりではあるものの特徴だけでもちょっと異質ですね。この特徴をもとにVaporwaveの色々を紐解いていこうと思います。まずは百聞は一見にしかずってことで、誰が作ったかもわからないVaporwaveらしいMV的な映像です。参考資料としてどうぞ。



MACINTOSH PLUS - 花の専門店

nobody here

PARADISE SPA - architecture in tokyo


★ Assorted Vaporwave Mix #2 | 2+ Hours ★


VHS LOGOS /// FEELING





どうですか

音質・画質の粗さ、CGのチープさやカクカクした3Dポリゴンとか…80年代後半~90年代前半頃の曲、映像のサンプリングです。
これが特徴① 80年代後半くらいの曲をサンプリングして再構築した曲」と「特徴② 80年代後半くらいの画質の粗い映像を適当につなぎ合わせたMV(っぽい映像)」です。多少時代は前後するものの、曲も映像も元ネタは80年代後半~90年代前半から引っ張って来てることが多く、この時代感は一貫しています。


そして曲は、「特徴③ 音楽ジャンルでいうとディスコ、フュージョン、アンビエント、チルウェイブとかそのあたり」のクロスオーバー。元ネタになる曲も80年代後半~90年代前半頃のポップス(インストから歌有りまで様々)から、スーパーの一角で流れていそうな愉快な雰囲気を演出する系のインスト曲、深夜の天気予報で流れてそうなBGM的なインスト曲とか、そもそも曲としてカウントするかも怪しいような曲まで使われてたりします。
サンプリングの手法がまた独特。原曲からすると極端に低速(スクリュードという手法らしい)で、ボーカルごと伸ばすからモザイクかけたような不気味なボーカルになってたり、曲を音飛びレベルで刻んでループさせたり、よく分らないタイミングで変拍子になったり。何の盛り上がりも見せず同じフレーズをただ繰り返した挙句唐突にブツっと終わったりとか…コラージュが過ぎる作品も多々。曲によりけりではあれど気味の悪ささえ感じるカオスっぷりです。

ヴィジュアルも同じ調子で、80年代当時のザラついた画質で特に曲とは関係ない映像を適当につなぎ合わせてチープなエフェクトかけたものもあれば、1つの映像をただ淡々とループさせるだけなんてのもあったりして、いろんな形があれどやはりコレも違和感が残る仕上がり。

しかしこの気味の悪さや違和感こそVaporwaveらしさだったりもします。





そしてなぜかVaporwaveは日本と親和性の高いジャンルらしく、曲名、プロデューサー名、ジャケット等々、随所に日本文化を取り入れた作品が多数存在します。これが「特徴④ なぜか蔓延する日本の言葉、映像、音楽」です。例えば名前なら、


情報デスクVURTUAL
スーパーセックス永遠にSUPERSEX420
t e l e p a t h テレパシー能力者 and 猫 シ Corp.
░▒▓新しいデラックスライフ▓▒░ 


こんな調子です。こういう奇をてらったネタみたいな名前も多く存在します。真面目にやってるんでしょうか。若手のインディーズバンドとかにもありそうな名前。ちなみににこれ全部外人らしいです。日本語を使用したアーティスト名ばかりですが外人です。曲も聴けます(bandcampは全体的に音がデカいので注意)






日本語が分からない外人が適当に拾ってきた日本語を組み合わせたエキサイト翻訳感あふれる組み合わせの単語の寄せ集め。この胡散臭さ。時々ハングルが混じってたりもします。こんな調子で意味がなさそうな日本語と英語を組み合わせた曲名も散見されます。これが「特徴⑤ 曲、映像から曲名やプロデューサー名などほとんど全てに意味を持たない」。曲や映像から入ってくる情報が多いから色んな意味が隠されている風に見えなくもないですが、そこに特に深い意味はない事が多い模様。


一般的に聴く機会が多いであろうメジャーな曲というのは何かしらのメッセージを含んでいる事が多いと思いますが、Vaporwaveと言われるジャンルには基本的に歌詞や曲自体から受け取れるメッセージはないです。そもそも原曲を好き勝手にコラージュしまくってる時点で歌詞のメッセージ性、伝えたい事云々とかいう次元の話じゃないんですけど。

しかし個人的見解としては、Vaporwaveは80年代後半~90年代前半という時代を感じて懐かしむところにひとつ意味があるような気もしてます。実際Vaporwaveっぽい映像や曲を見たり聴いたりすると、80年代後半~90年代前半のイメージビデオを見ているような感覚になりますし。あの頃を体現してるというか、あの頃の記憶を思い出そうとする時に頭の奥底で微かに流れていそうなぼんやりとした音楽と映像を具現化したみたいな。作り手がそれを意図しているかはさておき、私はそんな楽しみ方をしてます。




次は変名とかいうこれまた独特の文化について。
多数プロデューサーがいる中で変名(名前は違うけど中の人は同じ)で活動してるプロデューサーもこのジャンルには多数存在します。例えば「Internet Club」と「░▒▓新しいデラックスライフ▓▒░」は同一人物による変名だとか。変名にする理由は人それぞれかと思ういますが、この実在するようでしないようなジャンルの性質上、リスナーを煙に巻くというか匿名性を意識するが故、あえてプロデューサーとしてのブランド力を持たないように撹乱してるのかな~とも思います。プロデューサーによってはその名前ごとに作風が違ったりするので、その人なりの住み分けなのかも。


そしてこれだけ無数のプロデューサーがネット上で曲を発表していながら、「特徴⑥ 表だって活動している人がほぼいない」ところもこのジャンルの特徴。ネット発祥のジャンルであることが理由のひとつでしょう。
個人でツイッターやタンブラーのページなんかを持っているプロデューサーもいますが、それもあまり商売っ気のある宣伝ポストがほぼ見受けられないのもこのジャンルらしい。”Vaporwaveで食って行こう”という人より”Vaporwaveで遊ぼう”みたいなスタンスでやってる人の方が多い気がします。そんな人が多いから表だって活動していく理由がないんじゃないかと。

そもそも変名が多いから、誰かの変名なのか否かも判別がつかない作品が山ほど存在してて、結局正体が誰なのか分らない作品も沢山あるわけです。極端な話プロデューサーの母数自体はものすごく少数で、Vaporwaveというジャンルの仕掛け人自体が両手で収まる程度の人数しかいないんじゃないかっていう。答えは一生出なそう




はい。そんなかんじで長いこと書きましたが、
いずれにせよネット上だけで局所的に盛り上がっていたニッチなムーブメントですね。これが、実在するかしないかイマイチ実態がつかめない蒸気(Vapor)のような音楽ジャンル、Vaporwaveといったところでしょうか…。モヤっとしたジャンルです。





個人的にオススメしたい作品もいくつかあるんですが話が大分長くなりそうなので、
興味出てきた方は最初に挙げたようなYoutubeに上がってるMVっぽい映像(日本の映像とかガンガン使われまくってるけど許可とか取ってないんだろうな)を漁ってみるとたぶん面白いです。映像混みでおもしろいジャンルだと思うので、個人的にはまずYoutubeで漁って見るのがいいかと。

音源だけならbandcampSoundcloudVaporwaveタグを漁ってみてください(ワンクリックで飛べます)。各ページ全曲フルで聴ける上、中にはフリーで落とせる音源もたくさんあるのでこちらも是非。
Vaporwaveに触れてみて、違和感や気味の悪さを感じつつもクセになるかも…と思ったら、もう少し調べてみてください。じわじわと面白くなってくると思います。Vaporwaveは意味が分からなくていいんです。むしろ意味が分からないのが良いんです。Vaporwaveに意味を問う方が野暮なのかもしれません。






さて、ここから余談。

今一番Vaporwave的なアプローチが盛んなアーティストがいます。それがEspecia。厳密にいうとVaporwaveのアーティストではなくて80'sディスコやAORをコンセプトとしたガールズグループなわけですが、「80年代後半くらいのTVの深夜4時前位に放送される天気予報っぽい」を狙って作っているMVです。今日本で一番目にしやすいVaporwaveはEspeciaかも。


Especia / くるかな



いろいろ書いてきましたが、ようは何が言いたいかというとVaporwaveめっちゃおもいろいってことです。一度調べ始めると毎回何か発見があります。
2014年現在は既にブームとしては下降線をたどっているようですが、そもそもほとんど明るみに出てないジャンルなので一部でカルト的な人気は保ちつつ、密かにしぶとく生き永らえるジャンルになっていくのかな~と思ってます。

Vaporwaveを調べるうちに近いジャンルで”Future Funk””Sea Punk”っていうこれまたニッチなジャンルがある事を知ったので、その辺りも含めてVaporwave界隈の動きはチェックして行きたいところです。





【2015.7.16 追記】 Future funkとSeapunkについても色々書いてみました

心の耳で聴け : Future funk と Seapunk というマイナージャンル


2014年7月28日月曜日

佐井好子が35年ぶりにステージに立つ日


佐井好子。
唯一無二なフォークシンガー。
1975年アルバム「萬花鏡」でデビュー



佐井好子 / 冬の地下道



デビューアルバム2曲目、「冬の地下道」…デビューにしてこの不穏空気感。

デビュー当時22歳。この江戸川乱歩を思わせるような不穏な雰囲気。暗く幻想的な詞。憂いを帯びた美しい歌声。これが佐井好子です。
70年代後半に合計4枚のアルバム出すことになるのですが、特に爆発的ヒットを生むこともなくあっさりと活動休止。休止の理由は自分の納得できる詞が書けなくなったからだとか。デビューから1978年までにたった4枚のアルバムを出して姿を消した為、彼女を”幻夢シンガー”と呼ぶ人もいたとか。(wikipedia抜粋)

そして精力的ではないものの、2001年には音楽活動再開。

余談ですがこのデビューアルバムは当時テイチク傘下のブラックレコードというところから発売されていたのだとか…なんとまあぴったりな。



と、前置きが長くなってしまいましたが、
ステージに立たなくなって久しい好子さんが35年ぶりにステージに立つ!
との報が。



なんてこった‥歌う好子さんが生でみられる日が来るなんて!感激。
好子さんのステージにはJOJO広重もゲスト参加予定とのこと。
気になり続けていたニューウェイブアイドルゆるめるモ!と非常階段のコラボも一緒に見れる。誰がブッキングしたらこういうことになるうでしょう…。やはりJOJOさんでしょうか。

なぜ今回好子さんがステージに立つことになったのか。経緯は不明ですが、行ってみれば真相もわかるのではないでしょうか。嬉しいようで怖くもあり、未知の世界に足を踏み入れるような‥不思議な気分です。

これは逃してはいけない…!


2014年7月14日月曜日

はじめまして


はじめまして。

こちらは音楽好きな私が好きな音楽の事、感じた事を書いていくブログです。ジャンルに一貫性がない事が特徴かな…。そういうブログです。

今まで行ったライブや聴いてきた音楽の事を文章で残して、後々振り返る事ができれば面白いかもしれないと思っていたのが1番のきっかけかもしれません。
昔行ったライブの記憶は「映像と照明の演出がキレイだった」とか「ボーカルがあんな動きをしていて面白かった」みたいな画的にとらえた事でしかもう思い出せないんですよね。その場でしか体験できない事を何度も体験しているのに。もったいない!ということで、文章で振り返る事ができるようにしてみた。というわけです。

ちなみに「心の耳で聞け!」とは私の祖父の言葉だったりします。

今は日本のアイドルから海外のメタルまで。その内趣味も変わっていくかもしれません…
私が気になるもの、好きなもの、行ったライブのレポなど、できるだけ文字で残せればと思っています。


語彙力も文章力もゼロですが、よろしければ