2018年8月2日木曜日

よく聴いた音楽 2018 5月・6月編



Steven Julien / Bloodline





ロンドンを拠点に活動するDJ / ビートメイカー・Steven Julienのミニアルバム。FunkinEvenという名義でも活動しているそう。本作は彼の家族と電子楽器の定番TR808の制作リーダーで昨年亡くなったローランドの創始者・梯郁太郎氏に捧げた作品とのこと。
ジャケの印象から新人ラッパーかな?と思ったら中身は結構ストイックなエレクトロニカ・ハウス。ジャズっぽいシンバル、アシッドハウスっぽいゆがんだシンセなどフックになる音や、エレクトロニックでありなあがらエモーショナルな温度感や浮遊感も持ち合わせた不思議な感触の作品。





SOIL & "PIMP" SESSIONS / Dapper




日本のインストジャズバンド・SOIL & "PIMP" SESSIONSのアルバム。
ジャズをベースにヒップホップ、R&B、エレクトロニカなどの影響も感じる、縦ノリより横ノリのグルーヴを重視した作品。本作では音数が多い攻めの爆音スタイル、ソイルの持ち味でもある”デスジャズ路線”は影を潜めている。それはメンバー脱退と活動休止を経て制作された試行錯誤の結果なのかもしてない。
三浦大知、野田洋次郎など、中には通常ジャズっぽいトラックで歌うことがなさそうなゲストを招いた歌モノもあり、どれもソイルとゲスト双方の個性を生かしあった良コラボだった。
ゲストの多さやデスジャズ封印など、新境地開拓には賛否あるようだけど長年追ってきた熱烈なファンというわけでもない私にとっては、広くブラックミュージックも吸収した踊れるジャズアルバムという感じで純粋に楽しむことができる作品でした。







Kiefer / Happysad





LAを拠点に活動する鍵盤奏者・Kieferのデビューアルバム。
ヒップホップのフィルタを通ったニュージャズ。きらびやかで都会的なローファイヒップホップ。
幼少期よりジャズピアノ、12歳からはヒップホップのビートメイクも学んだその経歴が存分に生きた音楽性。軽快なピアノが美しいのだけど、ジャズというよりビートの重さとローファイなフィルタが強い印象なのでアーバンなローファイヒップホップと言ったほうが近いかもしれない。ノンボーカルで程よく丸みを帯びたローファイな耳触りが心地よかった。めちゃくちゃオシャレ。







Soulwax / Essential



ベルギーのダンスロックバンド・Soulwaxの6thアルバム。
12年ぶりのアルバムリリースから1年。またアルバムが出るなんて誰が思っただろう。
無表情で淡々と打たれるBPM120前後の4つ打ちビートにサイケな上モノが乗ったエレクトロニカ。無心で踊り続けられる系ダンスミュージック。
前作が打ち込みとバンドの間のような音楽性だったのに対し、本作は時々”Essensial”という声が入る以外ほぼノンボーカルでエレクトロニックというかメカニックな音像で、バンド要素はほぼ無い。ラジオ局から依頼を受けて”Essensial”という言葉をテーマに2週間という短い期間で作られた12曲入り。前作で用いた機材は使用していないらしい。






パソコン音楽クラブ / DREAMWALK



関西を拠点に活動するDTMユニット、パソコン音楽クラブのアルバム。初の全国流通盤。
ヴェイパーウェイブを通過したクラブミュージック、シンセポップ…とは書いてみたものの、ハウス、シティポップ、フュージョン等々各曲のクロスオーバーっぷりも凄まじく、ビシッとどのジャンルとも言い表しにくいのだけど、曲の頭でグッとつかまれるキャッチーさとノスタルジックなメロディラインのエモーショナルさ、周波数が合わないラジオのノイズようなローファイな音色、タイトルが示すとおり夢の中を歩いているような虚構の世界が広がっている。パ音ワールド。
サックスが入ったミューザックのような最後の「Beyond」で夢か夢ではないのか分からないまま小奇麗にふわふわとフェードアウトしていく様もまたノスタルジック。






Ric Wilson / BANBA





シカゴの若手ラッパー・Ric Wilsonの2ndEP。
ラップと歌唱を自在に行き来するソウルフルなヒップホップ。打ち込みが基本ではあるもののカジュアルで時々アコースティックな暖みのあるトラック。それに音楽性や人物像は真逆っぽいけどLil Wayneを思わせる特徴的なヘリウムボイスに軽いフロウのラップが乗った、まろやかなグルーヴ感漂う作品。万人が好感を持ちそうな人当たりの良さというか、いい意味でラップ特有のイカツさを感じないところが良い。
ちなみにタイトルの『BANBA』は、1曲目頭のリリックにもある「Black art not bad art」の略。






Kamasi Washington / Heaven and Earth



アメリカのジャズサックス奏者・Kamasi Washingtonの2ndアルバム。
もはや説明不要レベルの新世代ジャズの象徴的アーティストの1人。CD2枚+隠しディスク1枚、トータル3枚3時間強という常軌を逸した尺の2ndアルバムをドロップ。内容はデビュー作『The Epic』に近い感じだけど長さとしてはそれ以上の超大作です。アルバムは『Heaven』と『Earth』に分かれており、1枚目の『Earth』はKamasiから見た外向きの世界、2枚目『Heaven』は彼の内側の世界を表しているそう。
綿密に作り上げられた壮大な世界観ゆえ、正直アルバムの世界を全然理解しきれていないのだけど、組曲になっているわけではないので通しで聴いても単曲で聴いても小難しい事考えずに曲単品で気軽に再生してその世界観の片鱗に浸るという聴き方もアリ。
指捌きが見えそうなサックステク、重厚なアンサンブル、ベース、ピアノ、などアグレッシブに躍動する各楽器の粒立ちの良い音に着目してみるのも楽しい。聴き方楽しみ方も無限大にありそう。





Young Gun Silver Fox / AM Waves

AMウェイヴズ


イギリスのAORデュオ、Young Gun Silver Foxの2ndアルバム。
メロウで爽やかな70年代後期のAOR。1曲目のイントロで既にSteely Danさながらな音楽性全開で制作時期を疑うも紛れもなく今年の作品だった。目立った今風のアレンジもなくそのまま完走。ジャケットが示す通りの夕暮れのサマーブリーズ感。気分は西海岸。






Sen Morimoto / Cannonball!!

How It Feels



京都出身の日本人でシカゴ在住のシンガーソングライター・Sen Morimotoの1stアルバム。
ヒップホップ、ジャズ、ロック、R&Bなどの要素を取り入れた、どのジャンルとも言い難いジャンルレスなオルタナヒップホップ。
ギターやサックス、ドラムをはじめとした生音、エッヂの立った変則ビート、それに素朴でスモーキーなボーカルと、まとまりのなさそうな要素をサラッとまとめ、複雑さや重さを感じさせないソフトな音像に仕上がっている。綿密に練られた新世代ビートミュージック。
幼いころ渡米したため日本語のレパートリーはさほど多くないらしいが、一応日本語混じりのリリックもアリ。トラックに使われた楽器は全て自身の演奏というのも衝撃的。歌も演奏も打ち込みも何でもできちゃう系天才肌。